9月大会にて大御所・鶴見五郎との対戦を経験した大久保は、執拗に迫るグラップリングマシンとの決着をつける為に、自身の保持する頑固ヘビー級のベルトを賭けての対戦に望んだ。さすがに卑怯な手は使いたくないのか、グラップリングマシンは単身リングに上がる。試合前の記念撮影にも応え、神妙な面持ちの両者。
試合開始、素早いグラウンドの攻防に観客は息を飲む。お互いに得意としているキックやサブミッションを繰り出すがまだ序盤戦、じっくりと自分の流れを掴もうとする両者。まずマシンは大久保の腕を、逆に大久保はローキックからマシンの下半身を中心に攻めて行く。
試合の流れが傾き始めたのはマシンのフロントキックから大久保が場外に転げ落ちた瞬間から。場外戦はマシンがペースを握り、場外を疾走してのフロントキック一発で大きく吹っ飛ぶ大久保。リング内に大久保を連れ込むとギロチンドロップ、コーナーに詰めてボディーへのパンチ連打。大久保はワキ固めで反撃の糸口を作り、膝を付いた状態のマシンにキックを見舞うが、それをキャッチしたマシンが裏アキレス腱固め。スタンドに戻ってからもソバットやジャンピング・キックで大久保の動きを止めにかかる。負けじと大久保も前蹴りからミドルキックを連発するが、再度キャッチされて膝十字固めに持ち込まれる。大久保は場外戦でのダメージが尾を引いたのか、なかなか自分の流れに持ち込むことが出来ない。
マシンの攻勢は続く。スタンドの状態で腕を極め、そのままローリングしてチキンウイング・アームロックを極める。ロープに逃れた大久保に追い討ちのワキ固め、バックの取り合いから後方に回転して膝十字固め。しかしこの膝十字を大久保がアキレス腱固めに切り返すと立場は逆転。序盤でマシンの下半身に攻撃を集中していた大久保、ここにきて効果が現れたのだろう。膝をついたマシンの右大腿部目掛けてローキック、リング中央で膝十字固めに入る大久保にとって最大のチャンスが訪れた。体勢を反転させられると逆片エビ固め、マシンがアキレス腱固めを仕掛けてくるとクロス・ヒールホールドで切り返す。スタンドに戻り、マシンもハイキックを放つが今度は大久保がこれをキャッチ、先程のお返しとばかりに裏アキレス腱固めからSTFへ。更にチキンウイング・フェースロックも加えてマシンからギブアップを奪おうとするが、執念でロープに手を伸ばすマシン。
四つんばいの状態になると、何と大久保はそのままの姿勢でマシンに頭突きを連発する。これまでには見られなかった攻撃の前にさすがのマシンも面食らったか。ミドルキックの連打、キャプチュードとマシンを追い込んでいく大久保、だがマシンもしぶとい。腕ひしぎ逆十字固めはギブアップ寸前までマシンを追い込んだのであるが、どうしてもギブアップの意思を出さないマシン。それならと10月大会、マシンとの一騎打ちでフィニッシュに使ったゴロースープレックスで決めようとした大久保だったが、この瞬間を狙っていたのかマシンは体を反転させて自爆に終わらせる。すかさずロープに走ってジャンピング・ニーパットを叩き込み、とっておきの秘策である魔神風車固めで大久保を叩きつけると遂に3カウントが入った! ベルト奪取以来「不動の王座」とも思われていた頑固ヘビー級王座がこの瞬間、グラップリングマシンに移動したのであった。
喜びを爆発させるマシン、対して大久保はがっくりとうなだれたまま控室へと消えていった。大久保にしてみればすぐにリベンジを果たしたいところであろうが…。
セミファイナルに組まれたキャプチャーインターナショナル王者・ジョータと「流浪のルチャドール」ドラゴン・ユウキ戦は最初カードを見た時「噛み合わない可能性がある」と思われたのだが、この試合がピタリとハマる好勝負となった。ユウキの武器は体重、こう言うとあまり良く聞こえないかも知れないが、体重差のある相手にグラウンドの状態で上からのしかかられると呼吸が詰まってしまうのだ。実際、序盤でのグラウンドで必死に下になるまいと動くジョータの姿からこの恐怖がわかってくる。
寝ている状態からの張り手一発でユウキからダウンを奪ったジョータ、だが打たれても打たれても前に出てくるユウキはジョータにとってやっかいなものとなった。フロント・ネックロックに行ったジョータの体を持ち上げてコーナーに突進、エルボーを連発で叩き込んだユウキはジョータを叩きつけるとムーンサルト・プレス! 想像を絶するダメージを負ったジョータはたまらずダウン。ユーキの恐ろしさが観客に伝わった瞬間であった。
スタンドの状態に戻っても前に出てくる事を恐れないユウキ。それならばとジョータは一瞬の隙を突き、飛びつき逆十字固めを極めた。ロープに近い位置ではあったが、完全に腕が伸びきった状態となりユウキがギブアップ。最後は互いに健闘を称えあう場面も見られた。好勝負は意外な所に埋もれているのかも知れない。
当日は元JWP女子プロレス代表・山本雅俊氏も会場に姿を現し、メインイベントのタイトルマッチを高く評価していた。「全盛期のUWFスタイルを彷彿させる、いやそれ以上の肉弾戦」とまで述べている。この大久保一樹対グラップリングマシンというカードは今日まで何度となく同じカードが組まれているのだが、驚いたことに観客からのアンケートに「もう飽きたからやめてほしい」という意見が全く無いのである。戦う毎に進化を続ける大久保とマシンの戦いはどのような結末を観客に魅せてくれるのだろうか。
前半の「やや胡散臭い」プロレス+後半の「格闘技路線が強いがしっかりした内容で魅せる」プロレスの融合が、頑固プロレスには存在している。10月大会に比べて観客数も増え、年末に向けて良い感触を得ていると思われる。難点としてはこの勢いが続きそうで続かない所があるのだ。興行を一つの商品として観客に提供する、この信念を常に忘れず続けて行き、内容で更に観客を満足させる事ができれば西調布の勢いは増してくるはずだ。
(Office S.A.D. 征木大智(まさき・だいち))
◆頑固プロレス11月大会『ゴミのプロレス』
2010年11月7日(日)
会場:東京・調布『西調布格闘技アリーナ(U-FILE調布)』(観客60人)
<メインイベント 頑固ヘビー級選手権試合 60分1本勝負>
○〔挑戦者〕グラップリングマシン(18分50秒 魔神風車固め)●〔王者〕大久保一樹
※初代王者大久保が3度目の防衛に失敗、マシンが第2代王者となる。
<セミファイナル 頑固コロシアムルール シングルマッチ 15分1本勝負>
○ジョータ【キャプチャーインターナショナル】(7分49秒 飛びつき腕ひしぎ逆十字固め)●ドラゴン・ユウキ
※両者に3ポイントずつ付与するロストポイント制を採用。結果はジョータ【D1 E0】、ユウキ【D1 E0】
<第3試合 マンモスジャパンツアーinアレナ・ニシチョーフ 時間無制限1本勝負>
▲澤宗紀【格闘探偵団バトラーツ】(3分52秒 無効試合)▲マンモス半田【スポルティーバ・エンターテイメント】
※ドラゴンソルジャーLAW、吉田充宏が乱入し収拾付かず
<特別試合 タッグマッチ 時間無制限1本勝負>
澤宗紀&○吉田充宏(8分50秒 片エビ固め)マンモス半田&●ドラゴンソルジャーLAW ※ノーザンライトボム
<追加特別試合 シングルマッチ 30秒1本勝負>
△ドラゴンソルジャーLAW(時間切れ引き分け)△透明人間
<第2試合 シングルマッチ 20分1本勝負>
○矢野啓太【格闘探偵団バトラーツ】(11分17秒 体固め)●ペドロ高石【カポエラ】
※背後からスリーパーホールドをかけられている体勢を潰して
<第1試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
○ヤマダマンポンド【SECRET BASE】&北原スーパースター!?(6分05秒 片エビ固め)松崎和彦&●サイクロン北原
※デッドスノウ 北原スーパースター!?の正体はバトラーツ・竹嶋健史、ヤマダと二人で「頑固反逆同盟」を立ち上げる。
◆頑固プロレス12月大会『頑固にほえろ!』in西調布
2010年12月5日(日)開場:17:30/開始:18:00
会場:東京・調布『西調布格闘技アリーナ(U-FILE調布)』
◇出場予定選手 グラップリングマシン ジョータ 澤宗紀 矢野啓太 ヤマダマンポンド他 全4試合を予定
◇チケット料金 前売り2000円/当日2500円 U-FILE会員&高校生1000円 中学生以下無料
詳細は頑固プロレスブログ http://gankopro.blog78.fc2.com/ まで。