秋葉原のメーンストリート沿いの雑居ビルにその“カジノ”はある。怪しげな細長いビルをエレベーターで8階まで昇ると、平日の夜にもかかわらず店内はスーツ姿のサラリーマンらでほぼ満席。熱気ムンムンだった。その中心に「ナイスキャッチ(チップ獲得)で〜す、ご主人さまっ」と甘ったるい声で巧みなディーリングをするメイドさんがいた。
懸賞金情報サイトを運営するハンターサイト(本社東京)が昨年9月に立ち上げたこのアミューズメントカジノ店「アキバギルド」には、17〜31歳まで総勢17人の“メイドディーラー”が在籍する。世界中のカジノを探してもいない現役女子高生ディーラーも抱えており、全体的に妹系の甘酸っぱいムードが漂う。
狭い店内にはバカラやブラックジャック、ポーカーのテーブルやルーレットが並び、常連客にはオタク系のほかカジノマニアもいるという。
もちろん非合法店ではない。いわゆるゲームセンター式カジノなので換金はできないが、ギャンブルに勝って店内貨幣の「アキバドル」を貯めれば、メイドさんからフットマッサージを受けられたり、2ショット写真を撮ることができる。そのテの客にはたまらない特典といえ、大盛況のひとつの要因とみられる。
ハンターサイトの薮内常弘社長(33)は「私自身が約10年、カンボジアやベトナムのカジノでディーラーをしていたんです。日本はカジノが合法化されていませんから、ゲームセンターなどが運営するアミューズメントカジノしかないのは仕方ないにしても、ただラスベガスなんかの雰囲気を真似てるだけでおもしろくない。一方、メイド喫茶も飲み物を運ぶぐらいじゃ僕にはつまらないんです。そこでディーラーをメイドさんにして、常にプレイヤーと対話しながらゲーム進行するという付加価値をつけました」と説明する。
アジアンカジノのディーラー兼講師として各国を渡り歩いた薮内氏は開店前の約1カ月、メイドさんにディーリング技術をみっちりコーチした。本格志向が受け、広告宣伝をほとんどしなかったにもかかわらず口コミで知られるようになり、週末には1日50〜60人が来客するようになった。1カ月あたりの目標客数は700人だったが、早くも月1000人を突破したという。
カジノ特有の熱気は萌えムードで中和され、プレイヤーの客とディーラーは楽しそうに談笑している。メイドディーラーのりょうこさん(23)は「メイドよりディーラーとしての意識のほうが強いですね。私、ブラックジャックがすごく強くて、お客さんに“鬼のりょうこ”って呼ばれているんです」と笑う。対決しながら萌える、というギャップがゲームを盛り上げるのだ。
同店では最低月2、3回はポーカー大会などイベントを開催しており、賞品提供する協賛企業として現在、複数社と交渉中。
薮内氏は「できれば秋葉原に進出してきた企業とタイアップしたい。メイド産業の存亡をかけ、アキバを盛り上げるために地域一丸となって協力する仕組みがつくれればうれしいですね」と話す。帰り際に「いってらっしゃいませ、ご主人さま」と見送られるカジノは確かに斬新だった。
メイドカジノ「アキバギルド」…千代田区外神田3-15-7第二丸信ビル8階(JR秋葉原駅電気街口から中央通りを上野方面に徒歩約7分)。営業時間は平日午後3時〜10時。土日祝日は午後1時に開店。月曜定休。
入店時にドリンク1杯つきサービス料700円を払う。1000円で2000アキバドルと交換でき金額によって交換率は上がる。ゲームセンターの風俗営業許可を受けており、チップは預けられるが、引き出し時に手数料がかかる。親子連れやカップルの割引サービスあり。
注目賞品は全メイドさんサイン&フォト入り看板、メイドさんがディーリングをコーチしてくれるプライベートレッスン権、フットマッサージなど。