逮捕されたのは、広島県山陽高校の元監督・川岡孝弘容疑者(39=アルバイト店員)。「山陽高校、川岡」と聞いて、ピンと来た高校野球ファンも多いのではないだろうか。90年・夏の大会で同校をベスト4に導いた『左腕エース』である。広島中央署によれば、川岡容疑者が同校野球部監督だった4月12日の午後10時半ごろに“事件”は起きたという。川岡容疑者は3年生部員宅を訪ね、室内からライターを発見。3年生部員が『喫煙』を認めたため、平手で十数発殴り、右耳に『急性感音難聴』の大怪我を追わせた。川岡容疑者は「十数発も殴っていない」と一部容疑を否定しているそうだが、事件直後に監督職を辞任(同18日付)。おそらく、学校側も事態を重く受け止めていたのだろう。
「被害に遭った3年生部員の父母から相談があり、学校側もことの真相を知ったようです。監督が夜間にわざわざ下宿先に乗り込んだということは、最初から生活態度を叱るつもりだったんでしょう。高野連は『謹慎1カ月』を監督に伝えましたが、すぐに辞表を提出しています。学校もそれを受理した点から察するに、行き過ぎた指導があったことを認めたと思われます」(地元メディアの1人)
一般論として、警察沙汰になったということは、被害者サイドは川岡容疑者と学校側の対応に誠意が感じられなかったのだろう。もっとも、被害者側にも『喫煙』という非はないわけではないが…。
「同校野球部の今後に大きな影響が出るのは必至です」(前出・同)
被害に遭った3年生部員は自宅ではなく、下宿先から同校に通っていた。野球部寮はない。だが、アパート下宿をし、同校に通う野球部員は他にも何人かいるそうだ。行き過ぎた点があるとはいえ、事件の発端は『下宿部員の生活指導』だ。学区外からの“越境入学者”の在り方が見直されるとの声も聞かれた。
川岡容疑者は同校OBであり、同校の甲子園初出場の「彼ナシでは果たせなかった」と言っていい。「投手・川岡」の名前は広島県大会の準決勝を終えたとき、全国紙でも報じられた。その理由は“彼の戦略”にある。初戦・広陵、2回戦・広島商、3試合目・尾道商、準決勝・広島工。『同年春季大会(広島県)ベスト4の高校』を1人で倒したからだ。
同年の甲子園大会を知るベテラン記者もこう続ける。
「90年の川岡? 覚えていますよ。球種は多い方ではありませんでしたが、攻めのピッチングは『高校生離れ』していました。相手打者の頭部スレスレに投げたり、攻守交代の際、相手ベンチを睨んだり。とにかく、強気のピッチャーでした」
夏の甲子園大会後の新チームでは「エース、4番、主将」。九州国際大学でも通算34勝をマークし、社会人・常石鉄工に進んだ。広島の野球関係者によれば、社会人野球の現役を引退した後は「野球とは関係のない仕事をしていた」という。
「でも、一昨年秋に山陽高校が新しい監督を探しているとの情報が流れ、彼の名前も同時に囁かれていました。正式に同校の監督に就任したのは昨年4月でした」(同)
高校時代のピッチング同様、指導面でも強気に出すぎたようである。
広島県の夏の甲子園大会予選は7月13日に始まる。山陽高校は2週間余での本番突入となる以上、残られた野球部員の精神面での影響も懸念される。いや、“川岡監督”の退任した時点で動揺がなかったといえば、ウソになるだろう。同校を栄光に導いた好左腕は、後輩たちを最悪の状態に落とし込んでしまった…。