先場所全勝優勝を果たすも、千秋楽の鶴竜戦で右腕を痛めた横綱・白鵬。怪我の代償は大きく、令和初の開催となる今場所を初日から欠場している。
元号またぎの連続優勝に意欲を見せながら、結局無理に出場することはせず。現時点で実施されるかは未定だが、かねてより明かしている「東京五輪で土俵入り」という目標も決断の一因となったのだろう。
昨年は6場所中4場所で休場(途中休場含む)し、今年の休場も既に2場所。目標の東京五輪まではあと1年だが、それまでは横綱の特権を使ってのらりくらりとやり過ごすという魂胆が窺える。
ただ、今も記憶に新しい前例を考えると、思惑通りに休場が許されるかどうかはかなり怪しい。その“前例”とは、今年初場所で引退し、現在は荒磯親方として活動する元横綱・稀勢の里のことだ。
2017年3月場所を新横綱として迎えた稀勢の里は、賜杯と引き換えに左肩から胸部にかけての部分を負傷。翌場所から今年初場所の引退まで通算9場所を休場したが、当初は「治るまでしっかり休んで」という擁護が大半を占めていた。
しかし、休場が重なるにつれ、「いつまで恥をさらすんだ」、「潔く引退しろ」といった厳しい声が増加。前述した初場所前には、「そもそも横綱にしたのが間違いだった」という後出しの批判すら噴出する惨状だった。
角界待望の和製横綱でさえ大バッシングを受けたのだから、モンゴル横綱への逆風は恐らくそれ以上。しばしば指摘される素行不良も、大きなマイナスポイントとして自身に跳ね返ってくるだろう。
また、あの時かなりの“とばっちり”を受けた協会・横審側も、二の舞を避けるために強硬な態度を取ることは想像に難くない。
今場所前(11日)に協会が公表し、各メディアが伝えた白鵬の診断書の内容は「右上腕二頭筋断裂で約3週間の加療を要する見込み」。2020年を全うに迎えたいのならば、額面通りに怪我が回復してくれることを祈るほかない。
文 / 柴田雅人