計算外の連続だった。オープン戦で正捕手争いを繰り広げる予定だった銀仁朗(23)を欠いた。一昨年31セーブを挙げたグラマン(33)も、4月中旬に肩痛で登録抹消。2年連続本塁打王の中村剛也(27)も不振で、開幕13試合目でやっと一発が出たと思ったら、今度は肘の故障で戦線を離脱。岸孝之(26)も不振で二軍落ちし、ベテラン・石井一久(37)も故障を負った。1カ月ごとの勝敗表では負け越した月も確かにあった。しかし、8月に8連勝するなどし、ソフトバンクと最後まで優勝を争った。グラマンの抜けた穴をシコースキー(36)が埋め、5年ぶりに復帰した前オリックス・フェルナンデスの活躍も大きいが、試合巧者の西武にも弱点はある。延長戦だ−−。
昨季延長戦は10試合あったが、1勝8敗1分けと大きく負け越している。延長戦のみで防御率を見てみると、9.49。大一番とも言うべく、クライマックスシリーズが2試合連続で延長に突入したことを考えれば、日本シリーズに進めなかった敗因もそこにある。
しかし、救援陣の強化という面で見てみると、ストッパーの適性を持った大石達也(22=早大)は、先発で育てていくという。2位指名のアンダースロー・牧田和久(26)も平成国際大学、日本通運では主に先発投手として活躍してきた。そうなると、長田秀一郎、小野寺力、藤田太陽、岡本篤志たちの現有戦力に頑張ってもらわなければならないわけだ。武隈祥太(21)、宮田和希(22)の両左腕が成長してくれればいいのだが…。2年目の菊池雄星(19)は体力強化からやり直さなければならないので、少なくとも前半戦は計算に入れない方がいいだろう。
正捕手・細川亨(31)をFA退団した穴は、銀仁朗が頑張らなければいけない。昨季、144試合中112試合にマスクを被った『扇のかなめ』をライバル球団に流出させた代償は決して小さくはない。守備のサインにおいては全面的に変更させる箇所も出てくるのではないだろうか。
大きな補強をしていない投手陣を生かすも殺すも、彼次第ということになる。
打線にも『延長戦』で競り負けた一因はある。9回までのチーム打率と延長戦でのそれがあまりにも違いすぎる。中村1割6分7厘、中島裕之(28)は2割、フェルナンデスも2割5分。延長戦で打てないのは何故だろう。「ストッパー=エース」と解釈すれば、好投手を打ち崩す策も必要となってくる。
渡辺久信監督(45)は二軍指揮官時代から銀仁朗を高く評価していたという。捕手は試合に出なければ育たない。多少のミスが出たとしても、向こう10年を見据え、目を瞑る試合もいくつかあるのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)