浜口にとって、今回の出場枠獲得は険しい道のりだった。五輪出場枠が懸かった昨年9月の世界選手権で屈辱の2回戦負け。女子レスリングの他の3階級は伊調馨(63キロ級)、吉田沙保里(55キロ級)、小原日登美(旧姓・坂本=48キロ級)が世界選手権を制し、早々に五輪出場を決めた。「何もヤル気が起きず、競技をやめることも考えた」という浜口は、気持ちを切り替えて奮起。昨年末の全日本選手権では15度目の優勝を果たし、今大会に臨んでいた。
山本美憂とともに、五輪種目に採用される前から黎明期の日本女子レスリング界を支えてきた浜口。これまで、五輪や世界選手権といった大舞台では誤審や疑惑の裁定などで、不運が多く涙を流し続けてきた。
04年アテネ、08年北京ではともに銅メダル。北京では準決勝で、このアジア予選決勝で敗れた王嬌に敗退し、金メダルを逃した。2大会連続で五輪を制している伊調、吉田より、金への執着心は強いはずだ。
年齢的に次の16年リオデジャネイロ五輪は厳しくなる浜口は、「今回が最後。少しでもきれいな色がほしい」と銀メダル以上を目指すことを誓った。3度目の正直で、なんとしても王嬌へのリベンジを果たして金メダルを獲得してほしいものだ。
(落合一郎)