そんな地味で、全くない華やかさのない無人駅であるが、最近は徐々にスポットを浴びる機会が増えたようで今年6月には『無人駅探訪』という本が文芸社から発売された。『無人駅探訪』はその名の通り全国にある無人駅の写真とデータを集めた本で巻頭にカラー写真、巻末には全国無人駅リストと、まさに無人駅の魅力を凝縮した濃い一冊でビギナーからマニアまで楽しめる本として好評を得ているという。
考えてみれば、鉄道好きの女子『鉄子』という名称を一般化させた漫画『鉄子の旅』(作:菊池直恵)は車両よりも駅を愛する男を主人公にしたものだったし、おととし竹書房から発売された『わびれもの』(作:小坂俊史)は作者お気に入りの無人駅をレポートするというエッセイ漫画であった。また、近年ではなんと無人駅を舞台にした『無人駅痴漢』というアダルトビデオまで発売されていたりする。このように徐々にではあるが『無人駅』は世の中に認知されつつある。
さて、ここでこれから無人駅にハマりたい! という人に向けて、都内からでも行けるオススメの無人駅を紹介したいと思う。冬の青春18きっぷシーズンはこれらの駅を探索してみるのはいかがだろうか?
★JR青梅線 白丸駅… 都内のJRでは最も利用客が少ない駅。山深い景色はここが本当に東京都なのかと疑ってしまうほど。2011年春より駅の改修が完了し、光るドーム状の待合室が姿を現した。その姿はまるでUFOのようである。ミスマッチがたまらない。
★JR内房線 竹岡駅… 房総半島をぐるりと廻る外房・内房線は観光路線としても人気が高い。竹岡駅は内房線の隠れた絶景ポイントとして知る人ぞ知る存在で、夕日が水平線へと沈む瞬間は息をのむほどに美しい。この絶景をひとり占めできるのは無人駅ならではの魅力。
★JR鶴見線 国道駅… 駅…というよりも駅前の高架下が凄い無人駅。昔懐かしい看板が立ち並び、まるで昭和時代にタイムスリップしたかのような錯覚になる。ちなみに近くには生麦事件の現場や第二次世界大戦で米軍が発射した機銃掃射の痕が残っているなど歴史散歩コースとしても見所あり。
★JR東海道本線 根府川駅… 小田原と熱海の中間に位置する無人駅。駅がやたらと広く相模湾も一望できる解放感たっぷりな無人駅。熱海に行く前にここでのんびり海を見ていこう。
★JR外房線 行川アイランド駅… 行川アイランドとは2001年に閉館した遊園地のこと。遊園地自体は無くなったものの駅は当時のまま残っている。かつては賑わっていた様子が伺えるがいまはその影もない。廃遊園地+無人駅という組み合わせはその手の愛好家にとって大好物なので休日になると鉄道ファンが多く訪れる。
★いすみ鉄道 三育学院大学久我原駅… 駅名がむっちゃ長い! 周りに民家が3件しか見えない千葉県の最強の無人駅。都内からのアクセスも簡単で「何も無い」ことを望むなら絶好の無人駅といえるだろう。
★JR飯田線 小和田駅… 「秘境駅」として有名な駅。廃虚になった工場、乗り捨てられたミゼット、1件しかない民家、壊れた釣り橋とどれをとっても衝撃的! 駅の概念ぶち壊れること間違いなしの無人駅のスーパースターである。もっとも近ごろは観光客も多く、駅というよりも半分テーマパークのような扱いになっているのが惜しい。誰もいない平日に訪れて堪能しよう。
今回紹介した無人駅はほんの一部。現在ある無人駅はなんと5000を超えるという。
近年はいすみ鉄道や飯田線など、無人駅があることを逆にメリットにし観光地化を図る路線も増えているが、ほとんどの無人駅は乗る人も降りる人も少なく、ひっそりと日々の役目を果たしているのが現実だ。しかもとある駅では誰もいないことを理由に自殺者が出たりと鉄道会社の悩みの種となっている現実も忘れてはいけない。
しかしひっそりと健気に頑張っている駅があるからこそ、無人駅は我々の心をつかんで離さないのだ。
(穂積昭雪)