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華麗にして力強き洛西の大祭──京都・松尾大社「松尾祭」

 「ほいっとぉ、ほいっと」。神輿を担ぐ独特のかけ声が、鳴釻(なりかん)の賑やかな音とともに桂川流域に響き渡った。京都最古の神社といわれる松尾大社「松尾祭」の神幸祭である。

 神幸祭は4月20日以降の最初の日曜日に行われる。ゆえに今年は25日。この日は尾を引いた寒さを吹き飛ばすような、春らしい陽気に包まれた。 神幸祭の通称は“おいで”。六基の神輿と唐櫃に遷された本殿のご分霊が、お旅所へ「ご出御される」ことから、21日後に行われる還幸祭の“おかえり”に対してそう呼ばれる。
 ご分霊を受けた神輿は、その歓喜を表現するかのように激しく揺さぶられ、担ぎ棒先端の鳴釻をチャランチャランと打ち鳴らして拝殿を三度回る。その後、順次本殿を出発し、今度はゆっくりと新緑に彩られた桂川を船で渡ってお旅所を目指す。

 松尾大社は、松尾山の神霊を大杉谷上部の磐座(いわくら)に奉祀されたのが起源とされる。祭神の大山咋神(おおやまくいのかみ)は洛西の総氏神であり、氏子区域は広大で、かつてはお参りも簡単ではなかった。それならばと神様が氏子の元へ出向いたのが、七つものご分霊が各所に三週間も滞在する祭の由来だといわれている。皇城鎮護の社として「賀茂の厳神」「松尾の猛霊」と並び称されたが、氏子を見守る眼差しはどこまでも優しかったらしい。このつながりが千年近くもの間、伝統を守り続けようと氏子たちが結束する動力源となったのだろう。

 今年の還幸祭は5月16日。こちらは神輿から本殿、神職にいたるまで葵と桂で飾ることから賀茂両社と同じく「葵祭」の名がある。洛西を熱狂で包むもう一つの葵祭に、一度足を運んでみてはいかが。

(写真「神幸祭・桂川の船渡御」)
神社ライター 宮家美樹

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