モーニング娘。時代にミュージカルに出演したことはあったものの、本格的な舞台は初めてだという。今回、出演のオファーがあった際には躊躇したようだ。
「話を聞いたときは、『舞台、私できない』とお断りしたんですけど、今回、プロデューサーの高柳さんが『いやいや、やりましょう。僕らも舞台は嫌いなんです』と言ってくれたことでホッとして、肩の荷がおりたんです」
「ボクらの罪団」は役者仲間が寄り集まり、映像や舞台、イベントなど多岐にわたる活動をするグループ。挑戦的な題材や突き抜けたパフォーマンスが話題の新進気鋭の団体だ。今回、団体のプロデューサーは、12歳からエンターテイメントの世界の第一線をひた走ってきた加護に惚れ込み、出演を依頼したという。
昨年9月の「ダウンタウンなう」に出演した折には、ダウンタウンの2人に「お芝居できないでしょ?」と問われ、加護は「お芝居できるんですよ」と自信ありげに答えた。実際、演技はどうなのだろうか。
「私、何でもそうなんですけど、できないと思われるのがすごく嫌で、できるようにしたくて。だから、ダンスもタップもジャズもそうなんですけど、『絶対できます』と言っちゃう癖があって。だから、できます(笑)。12歳からずっと芸能界にいたから、嘘をついて生きてきたと思うんですよね。嘘をついていたらそれが自分になっちゃって、本当の自分が見えなくなっちゃうというのが20ぐらいからあったんですけど、お芝居になったときにそれが生かせるんじゃないかと今回舞台をやりながら感じています」
この日の稽古でも堂々とした立ち振る舞いで、立派に演技をこなしていた。脚本・演出家の高橋俊次は加護の演技力に合格点を与える。
「役者ってゴマンといると思うんですけど、彼女自身、並大抵の経験をしていないというか、やっぱり一言一言に普通の役者とは違う説得力があるし、なんかにじみ出てくるものがあって。やっぱり、加護さんは表現の世界で生きていく人なんだなあとつくづく思いますね」
【嫌な過去も芸の肥やしとして】
今回の舞台は、東京で挫折を経験したヒロインが、同窓会をキッカケに田舎に戻ってきて再起をはかるというストーリーだ。そんなヒロインの設定は、加護自身と重なるところがあるという。
「私も実家が奈良で、東京に出てきて、奈良に戻っていた時期もあったので、そこは重なりますね。あと、今回のヒロインは、過去にやりたくない仕事をやっていたんですけど、私もやりたくない仕事もあったなあと。露出の多いグラビア系のお仕事とか」
これまでにもアダルトビデオやポルノ映画などの出演オファーは数多く受けてきて、出演する寸前までいったこともあったという。また、ここ数年は私生活でもトラブル続きというイメージがあるが、今はフリーとして活動し、原点に戻って芝居に歌にと芸事に精進している。
「振り返ると大変なこともありました。人間って本当に愕然するときには膝から落ちるんだなあと思いましたね。本当にダメってなったとき、膝ががっくんと落ちちゃうんですよ。そういうときのことって、私、けっこうメモに書いたりしているんですね。いいことってずっと思い出になるけど、嫌なことって人間忘れちゃうじゃないですか。だから、それを忘れないようにと」
そういう人生の積み重ねは、今後の芝居に生かすことができるか。トップアイドルとして一世を風靡した加護が、再起をはかって挑戦する舞台に注目したい。
(井川楊枝)