「来シーズンも中5日でまわす方が(先発投手に)責任意識が出てくる」
2014年シーズン、原巨人は『中5日』の先発ローテーションで臨んだ。日本球界では異例と言っていいだろう。他球団は先発投手6人を核とし、『中6日』でまわしている。メジャーリーグに倣ったのではない。原監督の言う『責任』とは、選手に貪欲さと緊張感を促すためのものだ。
シーズン終盤、原監督は心を許す年長のプロ野球解説者との談笑中、
「巨人が金満球団? 金満じゃなくて、怠慢、肥満ですよ、このチームは…」
とこぼしていた。
年齢を重ねたせいもあるが、指揮官の眼には「主力選手の練習量が少なくなった」とも映っていた。
「4、5年前、移籍してきた選手がよく言ったもんですよ。『巨人の選手がこんなに練習するとは思わなかった』って。でも、ここ最近はそうではない。ベテランと呼ばれる年齢になった選手たちは、怪我を恐れて練習量を抑えているというか、早出特打ちをしなくなり、投手陣も走り込みの量が少なくなりました」(チーム関係者)
練習量を抑えたベテランの1人に阿部慎之助(35)がいる。原監督は阿部の打撃不振を言い当てた。端から見れば、叱るなりすればいいと思うが、「本人が気付き、何事も自分から取り組まなければ、真の実力は養われない」ということらしい。
チームを『大人の集団』に引き上げたい原監督の構想によれば、『中5日のローテーション』を託そうとしている菅野智之(25)、内海哲也(32)、杉内俊哉(34)、大竹寛(31)、小山雄輝(25)の5人。チーム防御率は3.58(リーグ1位)だが、先発投手だけなら、3.36(同1位)まで上がる。とはいえ、引き続き同じメンバーにローテーションを託すのはコワイ…。
エース・菅野は最多勝レース次点の12勝を挙げたが、故障で戦線を離れた時期もあり、今季は158回3分の2しか投げていない。杉内、内海は不振で勝てない時期が続いた。大竹は広島時代から“隔年活躍の傾向”がある。「来季は大丈夫」と見るのはキケンで、右肩の故障歴もあって無理はさせられない。小山は交流戦から先発枠の一角を掴んだが、フルシーズンを投げた経験がまだない。
また、年間の投球回数で見てみると、チーム最多は杉内の159回3分の1で、阪神・メッセンジャーの208回3分の1(リーグ1位)、広島・前田健太の187回(同2位)、DeNA・久保康友の178回3分1(同3位)、中日・山井大介の173回3分の2(同4位)、東京ヤクルト・石川雅規の165回(同6位)と比べると、見劣りがする。
投球回数は、菅野11位、杉内9位、内海15位、大竹18位、小山26位。この先発候補5人の奮起はもちろんだが、年齢的に上積みが期待できるのは、菅野と小山だけ。この点から考えると、巨人の4連覇は『救援陣』に掛かっているのかもしれない。
来季より、澤村拓一(26)がリリーバーに転向する。13年に球団最多の42セーブを挙げた西村健太朗(29)は先発にコンバートされる。おそらく、澤村をクローザーとして固定するつもりなのだろう。原監督は「夜遊びをさせないため。(救援投手は)連投になるので、自己調整が…」と笑ったが、澤村が伸び悩んだ理由は野手陣の信頼を勝ち得なかったからである。
チーム関係者がこう言う。
「澤村の性格は頑固のひと言に尽きます。歴代投手コーチが緩急を交えた配球を勧めても、『でも!』と反論し、力で相手打者をねじ伏せようとする自分のスタイルを曲げようとしなかった。そういう態度は反抗的にも見えるし、一人で戦おうとする姿をシラケた眼で見る野手もいないわけではありませんでした」
クローザーで実績を積み上げれば、野手陣の信頼は自ずと高まる。連投に次ぐ連投となれば、緩急も覚えなければならない。「澤村に繋ぐ」という継投リレーにおいて、他救援投手との仲間意識も芽生えるはずだ。
原監督は『選手の意識改革』を4連覇の必須事項と見ているのではないだろうか…。だとすれば、それはもっとも難しい舵取りとなる。テキサスレンジャーズのマイケル・ミコラス(26)、アーロン・ポレダ(28)両投手の獲得が決まった。米ア・リーグの西地区に詳しい米国人ライターによれば、
「ミコラスは与四球が少なく、日本向きだと思う。ポレダが160キロ近い直球を投げる左腕だけど、米球界向きのムービングボールではありませんでした。制球難の欠点もあるが、190センチ強から角度のある直球を投げ込むタイプ。小さく曲がるスライダーで打ち損じを誘うピッチングができれば…」
と評していた。
ミコラスは先発、ポレダは救援で起用するようだ。
今季、内海、杉内、菅野がローテーションを外れたとき、宮國椋丞(22)、今村信貴(20)らにチャンスが与えられた。来季も同様の起用法でスタートするものと思われるが、新加入のミコラスを含め、先発予備軍が菅野たちを「ローテーションから引きずり下ろしてやる!」くらいの気概を見せなければ、原監督の目指す意識改革による4連覇は成し得ないだろう。(スポーツライター・飯山満)