女性は撮影のためビッグフットを探していたスタッフの一員だった。撮影隊は捜索中、当初の目論み通りビッグフットに遭遇する事には成功したのだが、ビッグフットは女性スタッフを見つけるとすぐさま彼女を捕らえて森の中に消え去ってしまったのだという。
撮影隊からの通報を受け、カリフォルニア州フンボルト郡は警察らを動員し、捜索パーティーを組織した。しかし、山林は広く彼女を見つけることは出来なかった。
やがて暫くの後、拐われた女性スタッフは同州ダーヴェルのリゾート地に姿を現した。彼女の姿は拐われた時そのままで、体に目立った傷などは無かった。しかし、彼女に何が起きたのか記者らが尋ねても、答えは返ってこなかった。彼女の口から出るのは叫び声やうなり声であり、人とまともに会話出来なくなっていたのである。
世間は、彼女はビッグフットの花嫁になってしまったのだと噂した。
しかし後日、彼女の仕事仲間で映画監督を務める男性がある映画を世に出した。タイトルは「ビッグフットの花嫁」で、彼女が誘拐された時の様子も踏まえた内容の映画だった。つまり、この「ビッグフットによる拉致事件」は単純に自分たちが撮影した映画のための宣伝活動だったのである。
文:和田大輔 取材:山口敏太郎事務所