尖った頭につり上がった目、唇のある横一文字の口にあばらの浮いた胸、体の横には薄い皮膜の翼が生えており、まさに怪物としか言い様のないビジュアルである。
ジェニー・ハニバーは漁師たちの間では守り神とされ、また怪奇な外見から多くの貴族・研究者たちの興味関心をひいた。手に入れられるものは写真のような乾燥標本だけなので、生前はどのような姿をしているのか、どのような生態なのかが長年に渡り研究されていたという。
研究の記録は古代ローマまでさかのぼり、当時の博物学者プリニウスは『博物誌』にて「海のドラゴンは捉えられて砂地に放られると、全く見事な速さで、鼻づらを使って穴を掘る」と紹介している。
また、中世になるとジェニーハリバーの正体は「エイの仲間ではないか」「エイの仲間のうちで最も恐ろしい外見をしているのが海のドラゴンである」と推察されていたが、生きている姿を捕獲することが叶わなかったためプリニウスの域は超えなかったとされる。
さて、写真の山口敏太郎事務所所有のジェニー・ハニバーであるが、一般的にジェニー・ハニバーは平べったく翼も大きいものが多いのだが、こちらは体に厚みがあり体長も60センチほどと長め。詰め物をしたのだろう、腹に大きな縦の縫い目がある。これは、ガンギエイの仲間であるサカタザメを加工したためだと考えられる。サカタザメはエイの仲間だが、厚みがあり大きな背びれを備えているので、サメと呼ばれているのだ。
ちなみにジェニー・ハニバーの一大『生産地』は江戸時代の日本であった。海国ゆえにエイが採れやすいためだろうか。国内でもまだ生産している地域が残っているという。
古代ローマから伝わる怪物が日本で作られ、世界中の人を驚かしている事実は非常に興味深い。
この「ジェニー・ハニバー」は現在、お台場のデックス東京ビーチで営業をしている「山口敏太郎の妖怪博物館」に展示されている。「海のドラゴン」の凶悪なビジュアルをじっくりと見て欲しい。
(山口敏太郎事務所)
ついに開館! 11月20日 お台場に『山口敏太郎の妖怪博物館』オープン
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