同ドラマは、親と離れ離れになった子どもたちが暮らす児童養護施設「コガモの家」を舞台に、子どもたちが懸命に生きる姿を描いた作品だが、初回放送(1月15日)を受けて、赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を設置する慈恵病院(熊本県熊本市)が、「預けられた子どもを傷つけ、精神的な虐待、人権侵害になる」として、放送中止を要請。
さらに、同21日、全国児童養護施設協議会と全国里親会が、「施設や里親の元で暮らす子どもが傷ついている」として内容の改善を求めた。
同22日には、慈恵病院が放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会に、審議を求める申立書を送付した。
同局では当初、「子どもたちを愛する思いも真摯に描いていきたい。ぜひ最後までご覧いただきたい」とし、強硬な姿勢を貫いていたが、第2話(同22日)でスポンサー3社がCM放送を見合わせ、第3話(同29日)ではスポンサー8社すべてが降板し、風向きが変わった。
同30日から2月1日にかけて、同局は全国児童養護施設協議会、全国里親会、慈恵病院を訪問し、「内容に配慮するよう検討する」と伝え、態度を軟化。
同4日には、同局は全国児童養護施設協議会に対して、文書で回答。「本ドラマを視聴した施設の子どもたちが傷ついたりしたのならば、重く受けとめるとともに、衷心より子どもたちにお詫び申し上げます」と詫びた。
そして、「これまで以上に、子どもたちに配慮してまいります。具体的かつ詳細な点につきましては、ドラマという性質上、ご説明することはご容赦頂きたく存じます。ご指摘いただいた点については重く受け止め、すでに主体的に番組制作に活かしております。ストーリーは、当初の構想に従って展開致します。また、細部において誤解を生むようなことがないよう、細心の注意を払ってまいる所存ですので、改めてこのドラマを最後までご覧になっていただきたく存じます」といった趣旨の回答をし、内容改善に努める方向を示した。
同5日、全国児童養護施設協議会が全国里親会、慈恵病院関係者同席のもと会見し、「一定の改善が図られると受け止めた。引き続き見守りたい」と評価。慈恵病院側は「放送中止要請」を撤回したが、全国児童養護施設協議会は公の場での“謝罪”を求めた。
そんななかで放送された第4話(同5日)では、第3話で流れたスポットCMもオンエアされず、ACジャパン(旧公共広告機構)のCMと番宣のみ。視聴率は、過去最低の13.1%(数字は以下、すべて関東地区)に沈んだ。
これまで、同ドラマの視聴率は初回=14.0%、第2話=13.5%、第3話では話題性からか15.0%までアップしたが、第4話では急降下した。
同局にとっては、放送中止や早期終了の事態だけは、なんとも避けたいところ。スポンサーが全撤退し、視聴率も落ちた現状では、強気の態度にも出られない。そのためには、今後、クレームをつけている全国児童養護施設協議会などの顔色をうかがいながら、内容を一部変更した上で、最後まで放送するしかなさそうだ。もはや、そうなると、肝心の視聴率など、気にしていられる状況ではなくなった。
(坂本太郎)