3着に敗れた悔しさより、藤沢則師は収穫に目を細めた。前走の関屋記念。マイケルバローズは4角最後方から一気に末脚を伸ばした。
「終いからの競馬でいい脚を使ってくれた。3走前の準オープンでユタカ君がそういう面を引き出してくれた。あれが(重賞好走に)つながったね」とうなずいた。
師がそう振り返ったのが湘南Sだ。その前の1000万特別を先行して勝利したにもかかわらず、武豊は一転、後方待機策を選んだ。何度かの騎乗でつかんだ馬の特性。それに加えて、クラスが上がれば単調な先行策だけでは通用しない。重賞を勝つ器に成長しようと思えば誰にも負けない「一芸」がいる。将来を見越した天才の「教育」にマイケルは結果で応えつつある。
6歳を迎えてからの目覚ましい充実。その理由を師は「以前は蟻洞(ぎどう)に悩まされて力を出せなかったが、不安が解消したおかげで自分からレースをやめることがなくなり、集中力が出てきた」と明かした。馬はまだ若々しく、デキも上々。「一戦一戦が楽しみ。秋のGIに向けていいレースを期待している」と続けた。
舞台は中山。直線の長い新潟と違い、乗り方には工夫がいるが、そこで鞍上には名手・横山典を迎えた。「分かってくれているでしょう」と師が見せた全幅の信頼。天才の教えを、東の名手が完成させる。