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パ・リーグにあって、セ・リーグにないもの(1) 共存共栄

 プロ野球の経営母体(親会社)は“時代を映す鏡”でもある。新人記者時代、年長の先輩方に教えられた言葉だが、今日のIT企業の参入を見て改めてそう思った。鉄道、映画、土地開発事業、マスコミ…。その時代を象徴する企業がオーナーを務めてきたが、『球団の買収・売却』はパ・リーグの方が多く経験している。そのせいだろうか。近年の球団経営改革案はパ・リーグが編み出し、セ・リーグが後塵を拝する図式になってきた。昨今、セ・リーグも導入を決めた『予告先発制』もそうだが、クライマックスシリーズもまた、パ・リーグが先駆けである。

 クライマックスシリーズ進出を決める終盤戦の戦いは、ペナントレースの優勝チームが決まる試合よりも盛り上がると言っても過言ではない。
 「横浜球団を除けば、セ・リーグ球団の買収・売却は四半世紀以上起きていません(球団名称の変更を除く)。セ球団は親会社の経営基盤も安定しているということでしょう。当然、そういった企業から出向された球団幹部は優秀な人材ばかりです」
 関係者はそう断言する。経営に関する改革案を語らせても、パ・リーグに引けを取らないという。では何故、セ・リーグから斬新な経営改革案が出ないのか。また、パ・リーグばかりが改革案を実施していくのか。それは「連帯意識」や、「共存共栄の意識」の違いにあるようだ。
 私事になるが、フリーランスの記者は必ずしも『取材許可』が下りるわけではない。そういうときは「行かないよりはマシ」と判断し、入場券を購入する。過日、球団やプロ野球解説者にコメントをもらう取材行程に切り換えるのだが、チケットを購入する際、とくに強く思うことがある。「パ・リーグの方が商売上手」だと−−。

 たとえば、楽天は『フレックス・プライス』を導入させている(09年〜)。「曜日、季節、対戦カード」によって値段が違うのだ。平日ナイターなら、割安料金で観戦できる。その反面、週末の人気チームとの試合は少し割高になる。また、ソフトバンクでは『チケットレスサービス』もあり、自社サービスとの連携でパソコンやケータイから簡単に入場券を手配できる。このチケット販売方法は他球団も導入する方向で検討していると言う。『パ・リーグライブTV』や、ケータイによる独自中継を使えば、試合、練習光景も視聴できる。パソコンやケータイを使った配信サービスはセ・リーグも前向きだが、『フレックス・プライス』や『チケットレスサービス』がパ・リーグ公式戦で浸透した理由は、共存共栄の意識を持っているからであり、「相手チームにも利益を還元できるシステム」だからだ。
 パ・リーグの改革案は、利益還元の共存共栄の意識が根底にあり、それを前提に議論されたものだから急速に浸透していくのだろう。

 楽天が球界に参入した直後の05年1月、当時ゼネラルマネージャーだったマーティ・キーナート氏にインタビューさせてもらった。そのとき、氏はJリーグを引き合いに出し、「彼らの組織は新しい。新しいから何でも出来る。プロ野球の伝統と人気は素晴らしいが、それが足枷になるかもしれない」とも語っていた。
 セ・リーグは善くも悪くも競争意識が高い。だが、巨人人気にぶら下がってきた経緯も否定できない。その反省はセ5球団の共通認識であり、伝統球団・巨人も観客動員数の回復に必死だ。球団収支はチケット販売、TV放映料、広告宣伝費、グッズ販売が4本柱とされている。かつてのようなTV放映回数が復活するとは思えない(地上波放送)。TV放映料に期待するよりも、チケット収益−−。パ・リーグ6球団が現実的な増収プロジェクトを選択したのは、新規参入の企業が多さだけが理由ではないと思うのだが…。(スポーツライター美山和也)

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