アニキ金本が自らベンチスタートを申し出たのは、4月18日。「(メンバー表交換の)5分前まで(金本の)名前を書いてあった」と真弓監督がコメントしていたように、試合直前までスタメン出場させるかどうか、首脳陣もかなり悩んでいた。木戸克彦ヘッドコーチ(49)は「出よう!」と、金本の背中を押したという。しかし、その激励後、「チームに迷惑を掛けたくない」とし、金本から真弓監督のもとを訪ねた。
『連続フルイニング出場』の記録は止まったが、『連続試合出場』の方は代打起用で続いている。前者の記録を止めた右肩故障が癒えれば「再びスタメンで試合に出て来る」というのが、関係者の一致した意見だが、何故、この一件が真弓監督の采配能力を問われているのか? それは「この1、2年のうちに金本に引導を渡す日が来る」と関係者は見てきた。そのとき、真弓監督は『勝利優先』で非情に徹するのか、それとも、金本に遠慮して自分のやりたいことも出来ないまま試合を淡々と進めていくのか、その出方に注目されていたのである。
真弓政権が誕生した直後、チーム関係者の1人はこう語っていた。
「金本をスタメンから外さなければいけない日は、近い将来、必ず来る。真弓監督はそれまでファンも納得するような若手を育ててくれるのか、それとも…」
20日の広島戦では初の外野手出場で抜擢を受けた控え捕手・狩野恵輔(27)が爆発した。若手を育てるにはそれなりの時間も要する。球団が期待した若手育成は、真弓監督も意識しているのは間違いない。
しかし、一方でこんな指摘も聞かれた。
「金本に『休め』なんて、それこそ星野仙一SDだって言えませんよ。前任の岡田彰布監督だって、躊躇ったはずです。真弓監督は貧乏クジを引かされたようなもの」(ライバル球団関係者)
真弓監督は“外様”であり、生え抜き指揮官のように、背後に『派閥』はない。岡田・現オリックス監督の辞意表明を受け、緊急登板させられたわけだが、近鉄コーチ時代の打撃指導、その理論には定評があり、「たとえ優勝できなくても、阪神で世代交代を進めれば、他球団が放っておかない」とも言われていた。
前出のライバル球団関係者は「金本はまだまだやれる」と前置きしたうえで、こうも語っていた。
「金本が走者を置いた場面で代打登場したら、怖いですよ。とはいえ、真弓監督は金本に気を遣いすぎている」
真弓采配には“遠慮”が見られると言う。温厚な人柄もあるのだろうが、どの球団にも『チームの顔』となる選手はいる。厳しい一面がなければ、選手全員にナメられる。岡田監督が短期間でオリックスを統率できたのは、開幕戦でカブレラを外す非情さを見せたからである。真弓監督にも、そんな勝利に徹した厳しい一面も見せてほしかったというのが、周囲の声だ。
「城島のリードについても賛否両論が聞かれます。阪神のコーチ陣は『若い投手の失投』なんて言い方で城島を庇っていますが、真弓監督は『初めてのセ・リーグで不慣れだから』みたいな言い方です」(同)
野球に「たら、れば」の話は禁物だが、18日の試合前、金本からスタメンを外れたいと申し出ていなければ、真弓監督は「4番左翼」で出場させただろう。前日、本塁送球のカットマンにも返球できなかったシーンを思い出すと、金本の右肩はさらに悪化していただろう。監督とは、人柄の良さだけでは務まらない難しい職種のようである。