21期でデビューした大橋勲は日大自転車部からプロ入りしたが、先頭固定競走が一日2レースに決まったあたりでは、本番の空きには先頭固定員を勤め、ひどいときには選手会支部長をやりながら先頭固定レースを引いたというエピソードも残っている。
30期の永原充、39期の守兄弟が出たあたりから、富山にも活気が出てきた。S取り競走の流行したころには笹倉重治(48期)が活躍した。笹倉のスタートの早さは恩田康司(群馬)佐野裕志(兵庫)と「どちらが早いか」と注目されたものだった。昔の特別競輪でも内枠に入れば間違いなく前をとって、番手勝負をしていた。
いまは息子の慎也(91期)がデビューしている。現在はA1だが、親譲りのスプリントはキャリアを積んでいけば…と期待される。
稲積秀樹(55期)は富山県唯一のタイトルホルダーだ。昭和62年の京都向日町全日本選抜でGI、GIIクラスに上った稲積は追い込み、さらにはまくりで活躍、平成6年の競輪祭では(2)(3)(1)(3)と準優を1着で突破、翌平成7年の地元ふるダビ富山では松本整(京都)の2着に入った。
このときの松本は4角内線を深く切って失格審議になったがセーフだった。もしも松本がアウトなら地元での制覇がなったのだが…。
その悔しさは3年後の平成10年豊橋ふるダビで晴らした。同支部の石川勢、小嶋敬二・伊藤正詞と連係した稲積は吉岡稔真(福岡)鈴木誠(千葉)十文字貴信(茨城)を破って優勝。伊藤も2着に入り、2車単(4)(6)2万8450円の大穴を出している。
現在の稲積はA級に落ちているが、まだ42歳。体調さえ戻れば、しぶといレースをS級でも見せてくれるはずだ。
平成14年の高松西日本王座以来GI、GIIには縁がない。A級戦でも穴配当を出しているあたりは「穴男」としての存在感は消えてはいないようだ。
穴男といえば大庭正紀(70期)が念願のS1を今期掴んでいる。地味な選手だが、直線の差しとコース取りはベテランになってから冴え渡り、中部ラインの3番手から、混戦の4コーナー勝負になると、持ち味が生きている。
熊無俊一(72期)もA級に落ちているが、マーク追い込みのうまさはS級クラスで、今期はS級カムバックのチャンスだ。近況も8月地元富山を3連勝して波に乗り始めた。かつて、平成17年の弥彦ふるダビで補充とはいえ山本佳嗣(大阪)池田智毅(和歌山)の3番手から交わしの交わしを決めた脚は甦りつつある。