昨季、チーム全体で許した盗塁数は、リーグワーストの「125」。86試合でマスクを被った鈴木にしても、21連続盗塁を決められている。盗塁阻止率の低さからしても、捕手を強化しなかったのはナゾだ。
その一方で、オフの補強で話題となったのは、前巨人・李承●(●は火へんに華)(イ・スンヨプ)内野手(34)、前パイレーツ・朴賛浩投手(37)の獲得。このコリアン・コンビの加入により、韓国メディアからの注目度も一気に高まったという。日本在住の海外特派員によれば、韓国はオリックスの主催ゲームの国内中継を検討しているそうだ1月28日時点)。韓国中継がビッグビジネスに発展するかどうかは、まさに、李、朴の活躍次第である。そのなかでも、李が復活できるかどうかは、チームの命運も分けるのではないだろうか。
昨季、最後までクライマックスシリーズ進出を争った勝因は『打線』である。チーム総盗塁数は「34」と極端に少ないが、得点圏打率で見てみると、カブレラ・3割8分4厘、坂口智隆(26)・3割2分6厘、T-岡田(22)・3割2分5厘と、勝負強いバッターが多かった。そのチームトップの勝負強さを発揮したカブレラ(39)を慰留させなかっただけに、李が復活しなかった場合、チーム総得点は激減する。
交流戦初優勝の勝因も『打線』だった。交流戦期間中のチーム打率は、2割9分7厘である。今季は本塁打の初タイトルを獲得したT-岡田を中心に編成されるはずだが、その前後を任されるのは、李。やはり、彼のバットが勝敗を決めると言っていい。
昨秋のドラフト会議で岡田監督は大石達也(22=西武)の競合に参画したが、3度続けて抽選クジに外れてしまった。しかし、2回目の1位入札は「投手」ではなく、伊志嶺翔太(22=千葉ロッテ)を、3回目で山田哲人(18=東京ヤクルト)、4回目で後藤駿太(18)を選択したのは興味深い。野手である。結果論かもしれないが、オリックスは分離ドラフト年を含め、2000年から09年までの10年間で12人中9人の投手を1位指名してきた。しかし、近年のオリックス打線は外国人選手に依存しきっている。昨季、岡田監督が05年1位のT-岡田を「使う!」と明言し、実行したのは「フルシーズン、フルイニング出場可能な生え抜きの中核選手」が欲しかったからではないだろうか。そして、今季は「3年から5年先を見据えた再建ビジョンの一歩を踏み出した」というか…。
朴賛浩はもちろんだが、金子千尋(27)、木佐貫洋(30)、平野佳寿(26)、小松聖(29)らの投手陣が順調に仕上がれば、勝率5割越えは確実である。(スポーツライター・飯山満)