日本野球機構(NPB)は、日韓の自国シリーズ制覇チームが激突する『アジアシリーズ』について、新たな提案があったことを発表した(1月10日)。11月、台湾で開催したい−−。
関係者によれば、この発表をした下田邦夫事務局長が渡韓したのは、9日。韓国(KBO)、台湾(CPBL)のプロ野球幹部と『アジアシリーズ』を復活させる方向で話し合いのテーブルに着いたという。05年に始まったアジアシリーズが早くも“存亡の危機”に直面したのは、赤字問題に尽きる。昨季までは『日韓クラブチームチャンピオンシップ』と規模を縮小し、その形式だけは残してきたが、本来の試合形式に戻すには至っていない。
「一昨年から、CPBLが自国開催を申し出ていました。昨季の段階で台湾開催が実現しなかったのは、日程の調整が着かなかったからです。日本シリーズの日程が韓国、台湾側が希望するアジアシリーズ開催期間に重なってしまいましたので」(同)
アジアシリーズが設けられた理由は、いくつかある。そのなかでも、NPBが重点を置いているのは『対メジャーリーグ』。将来的には、メジャーリーグの『ワールドシリーズ勝利チーム』と、アジアシリーズ勝利チームがナンバーを決める『真の世界クラブカップ』に発展させたいとしている。
「アジアシリーズの必要性は大リーグのセリグコミッショナーも発言していますからね」(同)
また、中国、オーストラリアを加えた地域・5カ国で協力し、2020年夏五輪での『野球競技』復活を目指したいとしている。その目標と情熱は失っていないが、「ここまで盛り上がらないとは!?」というのが、NPBサイドの正直な感想ではないだろうか。
「(昨季の)千葉ロッテとSKワイバーンズの試合は、テレビ放送されましたっけ(笑)。ワイバーンズは日本球界でも活躍した門倉健投手(昨季終了後に退団)が投げ、韓国側も日本の視聴者を意識した選手起用をしていたように見受けられましたが…」(TV関係者)
アジアシリーズで日本以外のチームが優勝したことはない。WBCや過去の五輪大会での試合を見る限り、韓国の野球レベルはかなり高まっている。だが、日本のプロ野球ファンは「自国のプロ野球チームが勝って当然」と思っているのか、日本シリーズ終了と同時に野球熱も一気に冷めてしまう。
別のNPB関係者がこう言う。
「横浜が今季、台湾での公式戦を開催する方向で調整しています。台湾代表左腕の陳冠宇の獲得に動いてもいますので、その一環だと思われます。李承●(●は火へんに華)(イ・スンヨプ)、朴賛浩といった韓国のスター選手を獲得したオリックスも、韓国での公式戦を行う予定です。アジア市場への関心も、12球団で高まっているんですが」
昨年10月のインターコンチネンタルカップ(台湾)では、NPBは若手中心で代表チームを編成したが、次回からはアマチュアに出場機会を渡すつもりでいる。五輪復活、真の世界一決定戦を実現するためにもアジアシリーズの継続は重要だが、NPBは今回の台湾主催に関し、即答は避けている。
主催地が台湾になれば、アジアシリーズにおける主導権を韓国、台湾に奪われかねないからだ。また、試合球の問題もある。日本と韓国、台湾とでは、ボールを製造・提供しているメーカーが異なる以上、やはり、スンナリとは決められないことも多いという。
1回や2回の主催地変更ならまだしも、アジアシリーズの拠点を台湾に完全移行させた場合、NPBは10月上旬に日本シリーズを完了させるよう、公式戦日程をかなり前倒ししなければならない。
「12球団の代表者が集まる実行委員会で結論を出しますが、反対する球団も出るでしょうね。中日はWBCの選手派遣に難色を示し、『特定球団の利益に繋がり兼ねない』なる言い分も間違っていませんから」(前出・関係者)
実行委員会は何も決められないかもしれない。真の世界一を決める大会の実現までの道程は、かなり遠そうである。