そんな猫騒動のさなか、国内では日本スケート連盟が14年ソチ五輪でのメダル欲しさに、ウルトラCを画策しているというのだ。
“時の人”となったのはフィギュアスケートのペアで高橋成美(20=木下クラブ)と組むカナダ人のマービン・トラン(21)。2人は3月の世界選手権(フランス・ニース)で銅メダルを獲得。先の国別対抗戦では日本の優勝に大きく貢献した。ソチ五輪からは初めて団体戦が採用され、日本のメダル獲得には、この実力派ペアの存在が欠かせないとみられている。
ペアの場合、五輪には2人の国籍が同じでなければ出場できない。そこで、問題になるのがトランの国籍。当初、カナダ国籍を失うことに慎重姿勢をみせていたトランだが、ここにきて、「五輪は誰もが目指す目標。日本の一員として五輪に出たいという気持ちになった」と日本国籍取得に傾いた。
これを受けて、参議院議員で日本スケート連盟の橋本聖子会長が全面バックアップを約束。橋本会長が所属する自民党は、4月26日、党本部でスポーツ立国調査会を開き、トランの国籍取得を後押しする方針を固めた。今後は超党派のスポーツ議員連盟に働きかける。
ただ、国籍取得には5年以上連続して日本に居住していることなどの条件が必要。トランは居住どころか、練習拠点もカナダであり、現状では100%不可能。ところが、「特別な功労のある外国人」については、国会の承認を得て許可される「大帰化」という制度がある。過去にこの制度は一度も適用されていないが、橋本会長は「トランは5年以上、日本代表として活躍してきた。今年の世界選手権では銅メダルも獲得している」と特別な功労を強調。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長も、「必要があれば政府に要請書を出したい」と支援を表明した。
ソチ五輪でのメダル目的が見え見えのトランの帰化問題。過去に一度も前例がない大帰化が、果たして実現するのかどうか注目を集めるところ。仮に居住歴がないトランが日本国籍を取得できたとしても、猫同様、物議をかもすことは間違いなさそうだ。
(落合一郎)