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【帰ってきたアイドル親衛隊】足を運んだコンサートは約100回、思い出がありすぎる渡辺美里

 1980年代は、アイドルの登竜門と言われる多くのコンテストが開催されていた。そのコンテストの中でも個人的に注目だったのが『ミス・セブンティーンコンテスト』である。84年に行われた3回目には、国生さゆり・工藤静香・松本典子・網浜直子・藤原理恵などが参加して大きな注目を集めた。同コンテストでは、アイドル路線ではない人が最優秀歌唱賞を受賞。後に歌姫として注目された渡辺美里である。

 アイドルをメインにチェックをしていたので、優秀歌唱賞を受賞した渡辺はノーマークだったので、渡辺の動向を追いかけることはしなかった。そんな渡辺は85年5月2日にシングル『I'm free』でデビューすることになった。10月2日には1stアルバム『eyes』を発売。そのアルバムを小学生の時からの友人に勧められて聞いてみたところ、これまでに聴いたことのないサウンドに加え、当時高校生だった自分に刺さるような歌詞で、私の中で大きな衝撃を与えてくれた。翌年1月22日に、4枚目のシングル『My Revolution』が発売され、ドラマ『セーラー服通り』(TBS系)の主題歌にも起用され、この曲をキッカケに渡辺は大ブレークを果たした。

 デビューして2年でようやく売れたという感じだが、86年8月8日に西武球場(現メットライフドーム)で女性ソロアーティストとして初となるスタジアムコンサートを開催。記念すべき1回目の西武球場のコンサートだったが、私は行けなかった。しかし自分に渡辺を勧めてくれた友人は、しっかり観に行って歴史の証人になっていたのである。羨ましさもあったが、当時はおニャン子クラブをメインにアイドル現場に通っていた自分にとって、渡辺の現場は二の次になっていた。

 ようやく渡辺のコンサートを観ることができたのは、88年7月24日に開催された3回目となる西武球場のコンサートである。座席はセンター最前列。しかもNHKのBSで生中継することも決まり、渡辺のコンサートを初めて観るのに、何もかもが揃ったお膳立てができていた。オープニング曲は『My Revolution』。イントロが流れた瞬間に涙が出てきてしまった。しかも生中継で序盤から号泣している私がテレビに映し出されてしまい、後に多くの友人からからかわれてしまった。そんな些細なことはどうでもよく、渡辺の西武球場のコンサートを生で観れたことで幸せイッパイだった。翌年も西武球場に足を運んだ。この時は2日間の開催で、初日を楽しんだ後に、翌日も初日以上にテンションも上がり楽しむつもりだった。しかし2日目は天候が悪く、コンサートの途中から大雨が降ってきてしまった。当時の西武球場は屋根が無かったので、それはそれは大変な状況だった。ステージも客席もズブ濡れになってしまったが、そんなことはおかまいなしにコンサートは続行。10曲目くらいに『すき』を歌ったところで、主催者から中止の指示が出てしまった。バンドの演奏もできないくらい酷い雨になってしまい、最後はアカペラで『My Revolution』をみんなで歌い、歌い終わりで渡辺が「雨のバカヤロー」と叫びコンサートの幕は閉じてしまった。後にこのコンサートは伝説になり、今でも語り草になっている。

 西武球場で夏のコンサートを観るのは、自分にとって当たり前になり、毎年のように通い続けた。もちろん他のツアーやイベントにも参加して、おそらく渡辺のコンサートは、100回近く観たことだろう。そんな西武球場のコンサートで個人的に大事件が起きてしまった。2002年のコンサートの時に、たまたま招待券を頂いて観に行ったのだが、何と隣がTMネットワークの木根尚登だった。木根といえば、渡辺の楽曲を提供していることもあり、作った人の隣で聴くのはすごいことだが、とてつもない緊張もあった。コンサートの間ずっと緊張しっぱなしだったが、これまでありえなかった素晴らしい体験ができた。しかもコンサート終了後には、知り合いの口添えで打ち上げにも参加させてもらった。打ち上げでは目の前に渡辺が来て、自分のグラスにビールを注いでくれた。さらに紙皿に取り分けたお好み焼きまで私にもってきてくれて、本当に夢のような時間だった。しかし自分にとって完全に場違いだったので、その場所に長くいれる勇気は無かった。30分くらいで打ち上げを後にしてしまった。いい思い出として自分の中の「美里ダイヤリー」に刻み込んでいた。

 大好きな渡辺、大好きな西武球場のコンサートは私にとっては本当の宝物だったのだが、そんな素敵な時に終わりを告げる日がやって来た。2005年8月6日に西武球場でのコンサート20周年となり、その日が西武球場でやる最後のコンサートになってしまった。アンコールを含め43曲を歌うのだが、最後の『夏が来た』では涙を流しながら渡辺とともに大熱唱した。すべてが終ってしまい、客席には人が誰もいなくなるまで、自分は残っていて、最後にステージにこれまでの感謝の気持ちを込めて一礼をして西武球場を後にした。ひとつの歴史が終った瞬間で、淋しさも込み上げて来てしまい、このコンサート以降は渡辺のコンサートを観に行くことは無かった。

 あれから12年の月日が経った。渡辺の楽曲を聴きながらこの原稿を書いていたのだが、渡辺のコンサートを再び観たいという気持ちが蘇ってきた。6月からツアーがスタートするみたいなので、とりあえず7月に開催される埼玉県の三郷市で行われるコンサートのチケットを購入した。ここから自分にとっての渡辺美里第二章が始まるような気もする。

【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。

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