鉄は不安定な物質で、酸素と結合し酸化鉄の状態で安定する。錆びはその過程で生じる。それを防ぐには加工が必要で、日本刀のように、熱を加えて叩く製法は確かに錆びにくいが、維持するためには手入れが必要である。
一説によると、柱が、地中を支配する蛇の王ヴァースキの首に刺さっていると云われ、現在のように柵で囲われる以前は、あやかろうとした多くの人々が素手で触れている。現地の習慣で、強い陽射しから肌を保護するために塗る油が付着し、錆を防いでいるのではないかと言われる。ただ、錆びない個所が、人々が触れたであろう低い位置に限られていないことから、疑問である。
また、最近有力視されている説は、現地で産出される鉄鉱石には多くのリンが含まれており、精製過程で加熱しながら叩くとリン酸鉄となり、錆に強くなると言うものだ。残念ながらこの説だと、他にも多くの錆びない鉄製品が存在するはずであり、やはりこの鉄柱の謎が解明されたとは言えないだろう。
(七海かりん/山口敏太郎事務所)