松坂大輔(30=レッドソックス)が2年連続で不振に終わったため、日本人投手に対する評価が変わりつつある。ダルビッシュ有(24)、岩隈久志(29)の入札による米挑戦も報じられているが、その通りになったとしても、メジャー各球団は「もう、日本人投手を高額マネーで落札するようなことはしない」という。
米メディアの1人がこう説明する。
「松坂の今季の成績は9勝6敗、防御率は4.69。先発投手としては及第点ですが、レッドソックス首脳陣、地元ファンは厳しい見方をしています。なぜ、松坂ばかりが批判的な見方をされるか…。約1億ドルもの大金を叩いて獲得した投手だからですよ」
要するに、松坂の不振が長引いたことで日本人投手・全体の評価も落ち、「高額な落札金を出すのを辞めよう」との声が、メジャー各球団から聞かれるようになったのだ。
「松坂は先発ローテーション投手5人のなかで、5番目です。ウェイクフィールドが来季での引退を表明したのに、その順番(評価)は変わりません」(現地特派員の1人)
松坂の低評価を象徴する報道も見られた。
7日(現地時間)、ボストンのスポーツラジオ局WEEI電子版が「松坂は来季の構想に入っている。放出する予定はない」と伝えた。また、エプスタイン・レ軍GMは同局の単独取材にも応じ、「今季の彼は安定して球速を出しており、過去2年間より良くなっている。今季最後の2試合は今後に期待できる内容だった」ともコメントしている。『松坂擁護』ではあるが、同局は「他球団からトレードの打診があれば聞くが、レ軍から積極的に動くことはない」と“含み”のある言い方で、記事を締めていた。
その3日後、今度はボストン・グローブ電子版(10日)が松坂の去就問題を報じた。
<レ軍は受け身の立場 松坂放出>なるタイトルを付け、「松坂を欲しがる球団が多数あった。移籍先としては、メッツ、マリナーズ、レンジャーズ、ドジャースなど。仮に松坂を放出した場合、日本ハムのダルビッシュがポスティング制度でメジャー移籍を決断すれば、入札するのではないかという憶測も聞かれた」とまとめている。
しかし、同地元紙は「この記事は、スカウトと球団関係者10人以上を調査した結果」と“信憑性”も訴えており、松坂の放出は時間の問題のような書き方をしていた。
「レ軍は松坂のトレードを申し込まれたら、『話し合いに応じる準備ができている』ということでしょう。その点では、両地元メディアの取材内容は一致しています。レ軍は自分たちから『松坂放出』には動き出せないが、『放出したい』というのがホンネではないでしょうか」(前出・米メディアの1人)
松坂はレ軍と契約した06年オフ、『トレード拒否権』も勝ち取っている。移籍先が気に入らなければ、レ軍残留を主張できるが、「相手球団次第ではレ軍退団に応じる」とも解釈できる。
経済アナリストなどによれば、レ軍は松坂獲得に投じた『1億ドル』は、完全に回収しているという。しかし、「1年で2ケタ勝利をコンスタントに稼げない投手に、800万ドル(約7億2000万円)を払い続ける価値はない」と判断したのかもしれない。
ダルビッシュが入札制度に掛かれば、それに参画するとの情報も気になる。とはいえ、「高額な落札金を出したくない」とするメジャー全体の傾向からして、松坂を上回る大型契約は交わされないのではないだろうか。
「1000万ドル(約10億円)から、2000万ドルの間で落札し、契約期間も2、3年というごく普通なものになると思われます」(前出・同)
これには、アメリカ全体の不況も影響している。
しかし、小さな契約でスタートし、実績に応じて年俸額を高めていくやり方の方が当人のためではないだろうか。高額な契約を勝ち取れば、松坂のように、常に地元ファンから厳しい見方をされないで済む。
日本球界の関係者が「ダルビッシュ、岩隈が本当に入札に掛けられたら」と前置きした上で、こんな話もしてくれた。
「エースを手放すわけですから、球団もそれなりの見返りを期待しています。どちらとはいえませんが、15億円強を予定しているそうですよ(笑)。1000万ドルが関の山なら、今オフの米挑戦は辞めた方がいい」
松坂の不振は、これからメジャー挑戦しようという後輩にも多大な影響をもたらたようである。