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甲子園スターの伸び悩みで高井雄平が投手再転向

 報われない努力ほど、虚しいものはない。東京ヤクルトスワローズが『元エース候補』に対し、特異な育成方法を行おうとしている。『元エース候補』とは、2002年ドラフト1位選手、高井雄平(25=東北高)のことである。

 高井はルーキーイヤーの03年4月の巨人戦でデビューしたが、その後は一軍に定着できず、苦しいシーズンが続いている。原因は制球難だ。
 「変化球でストライクが確実に取れない。ボールカウントが先行し、真っ直ぐを狙い打ちされています。せめて『縦の変化球』をマスターできたら…」(イースタンリーグ首脳陣)

 150キロを越す左腕は貴重だ。しかし、『制球難』と『変化球不足』の課題はルーキーイヤーからで、昨シーズン、ヤクルト首脳陣は『打者転向』を命じた。
 「高井は打者として一生懸命練習しています。昨年11月25日に第二次トライアウトが神宮球場で行われたんですが、そのとき、第二球場でバットを振っているところを見掛けました」(TV局員)
 ヤクルト首脳陣はそんな『打者・高井』を投手に再転向させようとしているという。
 理由は簡単だ。他にめぼしい若手投手がいないからである。近年、ヤクルトは佐藤由規、村中恭兵、増渕竜義、赤川克紀などの有望高校生投手をドラフト指名してきたが、一軍ローテーション入りさせていない。由規(登録名)、村中は健闘した方かもしれないが、他球団の首脳陣の言葉を借りれば、「この程度の投手ではなかったはず」。投手育成の部門に問題があると言わざるを得ないのだ。

 チーム関係者の1人がこう反論する。
 「高井はピッチャーに再転向させるつもりで、打者をやらせたんです」
 前例はある。左腕・石井弘寿(32)は制球難を克服するため、外野ノックを徹底的に走らせる『下半身強化』を行い、再コンバートしたという。
 しかし、高井が必死にバットを振る姿は筆者も目撃している。投手再転向を前提としたコンバートだったら、あそこまでバットを振る必要があるだろうか。

 ヤクルトの二軍本拠地・戸田球場での試合を観戦したことがある。
 スタンドはバックネット後方だけで、一塁側ネットのすぐ隣がテニス場、三塁側は土手だ。荒川河川敷の総合グラウンドのため、球団の意向だけでは改築工事は行えないのは分かるが、ライト側のネットを越えた打球は雑木林に消えてしまう。ホームランが出る度に出番のない若手が“タマ拾い”に行き、野球好きのオヤジが「兄ちゃん、アッチ」と指をさす。若手は慣れた様子で「どうも!」と雑木林に入って行ったが、そのなかにはかつてのドライチ・増渕の姿も…。

 高田繁監督(64)が「少しでも投手の底上げができれば、十分に戦える戦力だと思っています」と挨拶したのは、1月12日のヤクルトOB会でのこと。その際、出席者の眼は荒木大輔・一軍コーチに向けられた。
 高井を再転向させるべきか否かの最終判断は同コーチが下す。高井の必死な姿を見ていると、二軍環境だけでなく、思いつきのような育成プランが悔やまれる。(スポーツライター・美山和也)

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