甲子園での今季初の伝統の一戦、阪神対巨人戦はモロに影響を受けた。「松井に日本プロ野球は吹き飛ばされてしまった。スポーツ紙の1面、テレビのスポーツニュースのトップを奪われてしまった。でも、あの活躍では仕方ないか」。日本球界関係者はため息をついた。
阪神、巨人球団トップはスーパースター・松井秀喜の偉大さを、改めて思い知らされると同時に、地団駄を踏む思いだろう。というのも、松井がヤンキースとの3年契約が終わる昨年のシーズン中、阪神と巨人は松井に対し、ラブコール合戦を展開しているからだ。
いち早く獲得に名乗りを上げたのが阪神。「日本球界への復帰を決めたならば、ぜひ阪神へきてほしい。甲子園の天然芝はヒザに優しいですから」と、決めぜりふを口にした。松井が「日本球界復帰を決めたわけではないですが、そう言ってくれるのはうれしいこと」と応じたものだから、巨人はビックリ仰天。
「背番号55は大田君に預けてあるだけ。日本に戻るのならば、巨人に復帰して欲しい」と、滝鼻卓雄オーナーは熱烈なカムバックコールを送ったのだ。巨人時代の松井の背番号55を大田泰示(東海大相模)に与えたことから、古巣・巨人への不快感を示していた松井への懐柔策まで口にした。
番外の巨人対阪神戦だ。最終的には、ここ一番に強い松井が奇跡を起こし、ヤンキースをワールドチャンピオンに導く、日本人メジャーリーガー初のワールドシリーズMVPを獲得。日本球界復帰話は自然消滅してしまったのだ。阪神、巨人球団トップは、今さらながらだが、幻の松井獲得劇を悔やんでいるだろう。