まず、ドイツではここ数年で男性も育休を取るのが当たり前になりつつある。ドイツでは子供が生まれた次の月から夫婦合わせて最大で3年間、育休を取得できるという国の制度がある。夫婦が別の期間に取得してもいいが、一方の親が単独で取得することも、夫婦が同時に取得することも可能だ。また1週間のうち3日は働き、残りの2日は休みにするというようなアレンジもできる。育休中は毎月、休業前の給料の67%分、最大1600ユーロ(約19万円)まで支払われる。7週間前までに雇用主に申請ですれば、子供が8歳になるまでの期間、いつでも育休を取ることができる。
「ドイツでは育休を取得することが当たり前といった雰囲気があり、取得しない方が『子供が生まれたことがうれしくないのか』と不思議がられます。法律で定められている以上、上司が育休取得に対して苦言を呈することもありません」(ドイツ在住の日本人)
そして男性が育休を取得しても、孤立しないのもドイツならではだ。多くの地域で父親と子供が集うコミュニティがあり、仲間を見つけることができる。民間の有料のコミュニティもあるが、SNSなどで呼び掛けて集まる無料のグループがほとんどで、SNSを通じて集まるコミュニティは日本より活発だ。公園などでは父親と子供が一緒になって遊ぶグループを見かけることも珍しくない。
「男性が育休を取得したところで、ママ友ならぬパパ友がいなくては育休を取った自分が特殊だと感じてしまう。相談できる相手もいないため、社会から孤立しやすくなってしまうと思います。それでは『男性が育休を取得するのは現実的でなかった』と男性の育休取得にマイナスイメージが広がり、男性の育休は浸透していきませんよね。しかしドイツには子供を通してパパ友ができる雰囲気があるので、そこで父親同士が父親ならではの悩みを打ち明けられるようです。そういった人たちを独身のうちから見ることで、男性は、育休を取得することに安心感を覚えるのだと思います」(前出・同)
ここまで男性が育児に対し、熱心になっているドイツだが、そこには出産前からの男性への意識付けも関係しているようだ。日本では婦人科に男性が行くことは不妊治療や出産の際など特別な時以外は避けられがちだが、ドイツでは婦人科に夫が連れ添うことは珍しくはない。診察台の横に男性が座るための椅子があり、エコーの映像も夫が見えるように複数用意されている。
「ドイツでは毎回、夫が検診に付き添うことも珍しくはないんですよ。胎児が大きくなっていく姿を見て、自分の父親になるのだと実感が湧いてくるようです」(前出・同)
なお、産前コースも夫婦で受けるものが多く、出産にあたり、夫が妻をどのように支えられるかをアドバイスしてくれる。
ドイツでは妊娠時から育児に対する両親の意識や姿勢が日本とは異なる。結果、父親も育児参加しやすい社会となっているようだ。