「早大、慶大、立大もスポーツでの自己推薦制度を導入したため、甲子園出場の経験者はもちろん、地方大会で散った強者が東京六大学リーグに入りやすくなりました。法大、明大はかなり前からスポーツ推薦制度を取り入れています。東大は同制度を導入する話は一切出ておりません」(大学関係者)
連敗脱出以降、東大野球部を追うマスメディアは減ったが、プロ野球スカウトは今も東大戦の視察を続けている。
スポーツのエリートではない現東大野球部に「要チェックの好投手」が出現したというのだ。2年生左腕・宮台康平(湘南高校−東大)である。春季リーグは中継ぎ役で登板し、連敗脱出を果たした法大戦にも投げているが、失点している。球速は140キロ台半ばとも伝えられているが、目立った功績はまだ無い。
宮台投手がドラフト指名の対象学年になるのは2年も先の話だが、「ほしい」と思った選手に関しては何年も費やしてデータを集めるのがスカウトの鉄則だ。
在阪球団関係者が宮台投手をこう評する。
「関東地区担当のスカウトが高校時代に見ていますが、指名リストには入っていませんでした。東大に入って伸びた投手。予想外だね」
過去、東大からプロ野球に進んだ選手は何人かいる。また、「左投手」という利点もあるのだろう。同様に、近年のドラフト会議を見れば分かる通り、救援専門投手や控え投手が上位指名されることも珍しくなくなった。宮台投手にも「将来性」という可能性を感じているのではないだろうか。
「左の中継ぎ投手を欲しているチーム、左投手の育成に自信を持っているチームは、どこまで成長するか興味を持って今後も見守っていくと思う」(前出・同)
スカウトの内部情報をひとつ披露したい。
12球団スカウトが対象選手の潜在能力を見極めようとするのは当然だが、指名するか否かのボーダーライン上にいる選手、つまり、判断しかねた選手に関しては、「誰に教わったか」という経歴も加えて最終決断を下しているのだ。
「どんな指導者に教わったのか」も指名の判断基準になるというならば、2013年シーズンから“弱小・東大野球部”を率いる浜田一志監督が、プロ野球界からも一目置かれているというわけだ。勝つに越したことはないが、東大にはその指導内容で評価される監督がいる…。そう遠くない将来、東大が東京六大学リーグで『一人負けする』こともなくなるのではないだろうか。