師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)によると、「本人は出たい気持ちが強いので、痛みが取れれば話し合う」とし、再出場の可能性はあるが、今場所、琴欧洲は1勝しかしておらず、強行出場しても、勝ち越すためのあと7勝を挙げるのは極めて困難な状況。
先場所(9月・秋場所=両国)、琴欧洲は左太もも裏を痛めて途中休場し、負け越しているため、今場所も負け越せば、大関から陥落する。
佐渡ケ嶽親方は「もし(今場所)出られなくて落ちても、来場所で10番勝てるように稽古して頑張らせる」と話した。
大関が2場所連続で負け越して、関脇に陥落した場合、翌場所に10勝以上を挙げれば、大関に復帰できる特例がある。ただ、現実はそう甘くはない。
最近では、把瑠都が今年初場所(1月・両国)に大関から陥落したが、同場所で8勝しか挙げられず、復帰はならなかった。その後、把瑠都はモチベーションが上がらず、左ヒザを痛めて、名古屋場所(7月)を全休。秋場所の番付は十両まで落ちたが、場所前に引退した。
本人も、親方も、「ケガさえ治れば、来場所10勝して大関に復帰」の青写真はあろう。だが、琴欧洲は故障がなくても、1ケタが定番だ。11年2月に八百長問題が発覚して以降、琴欧洲が2ケタ勝ったのは、12年初場所、今年初場所のわずか2回(いずれも10勝)だけ。来場所までに肩のケガが治っても、2ケタ勝つのは至難のワザだろう。
現行の降格制度になった69年名古屋場所以降、大関から関脇に陥落したケースは17例(14人)あるが、落ちた場所に10勝以上を挙げて大関に戻ったのは5例(4人)しかない。データを見ても、明らかなように、大関から落ちた場所での「10勝以上」は高いハードルだ。
北の湖理事長(元横綱)は「今の幕内上位は手ごわい相手が多い。(落ちた場所に)10勝は厳しい」と、なんとも悲観的なコメントを残した。
もともと、琴欧洲はケガ多く、大関での途中休場は今回で9度目。来場所、万全な体調で臨める保証はない。今場所、負け越して大関から陥落し、来場所、2ケタ勝てずに復帰がならなかった場合、把瑠都のように、早々に引退への道を選択せざるを得ない状況になるかもしれない。
(落合一郎)