だが、黒田を称賛するデータは他にもあった。黒田はたとえ不調であっても、ゲームメイクする力に長けた投手でもあるようだ。
「スライダー、シュートの使い方が非常に巧い投手だと思います。松坂(大輔)とは違うタイプだというのが米国の評価です」(米メディア陣の1人)
松坂だけではないが、メジャー挑戦した日本人投手の多くは『フライボール・ピッチャー』だった。先駆者・野茂英雄氏もそうだったが、バックスピンの効いた速球を武器にするタイプが多かった。もちろん、黒田のストレートも一級品ではあるが、メジャーではスライダー、シュートを内外角に投げ分ける投球が目立つ。その投球スタイルの変貌は黒田なりの研究によるものだろう。
『フライボール・ピッチャー』の弱点は、ホームランのリスクが高いこと。つまり、黒田はストレートのキレ、スピードで勝負するよりも、シュート、スライダーで凡打(内野ゴロ)を量産させる安全策のピッチングに活路を見出してきたのだ。
「黒田は変化球を低めに集めているので、ホームランを食らうリスクが少ない投手だと評価されています」(前出・同)
8日は被弾を食らったが(1本)、黒田が称賛される理由はほかにもある。試合序盤で失点されるケースが少ないのだ。
メジャーでは先の『クオリティースタート』が20回以上ある先発投手は「一流」と賞される。昨季の黒田は21回をカウントしている。それが11勝13敗(防御率3.39)と負け数が多くても、ドジャースが強く引き止めた理由だろう。
前出の米メディア陣によれば、黒田が広島帰還を前提に単年契約で残留したことについて、早くも「慰留交渉を始めるべき」との地元報道が出ているという。
「いや、広島も黒田を帰還させたい気持ちに変わりはありません。最後は本人次第ですが、野村謙二郎監督自らの渡米も考えられます。それくらい、広島は本気なんです」(日本球界関係者)
もっと言えば、メジャー式の調整方法に適応できたか否かも大きい。松坂は最後までその調整法に適応できなかった。
今季、日本人メジャーリーガーは全体に成績が悪い。現時点で合格点を与えられるのはこの黒田と福留孝介くらいだろう。バックスピンの効いたストレートも有効な武器ではあるが、黒田の成功は、今オフにメジャー挑戦を表明するとされるダルビッシュにも参考になるはずだ。
※メジャー関連のカタカナ表記は月刊メジャー・リーグ(ベースボール・マガジン社)を参考にいたしました。