12月2日、守備の名手に贈られる「第50回三井ゴールデン・グラブ賞」の受賞者が発表された。セ・リーグの捕手は、東京ヤクルトの中村悠平が選ばれた。中村の受賞は6年ぶり、2度目。今季の活躍は素晴らしいものがあったが、同時に聞こえてきたのは、「梅野はショックだろう…」の声。阪神・梅野隆太郎は、昨季まで同賞を3年連続で受賞していた。侍ジャパンメンバーにも選出されたメンツ、プライドもあったはずだ。
梅野と言えば、今季取得した国内フリーエージェント権(以下=FA)を行使するか否かで、迷っている。球団は慰留説得を続けているが、同賞が発表された時点では“結論”を出せなかった。
>>阪神・矢野監督、梅野へのコメントに「冷た過ぎる」の声 助っ人陣には残留熱望も、球団への“慰留丸投げ”意向が物議<<
話は、11月26日に遡る。阪神・矢野燿大監督が地元TV局のタイガースを応援する番組に生出演した。梅野のFAに質問が及ぶと、
「僕が監督になってから一番多くキャッチャーで(試合に)出ていますし、もちろん、来年も一番レギュラーに近いのは間違いない」
と答えた。
日本シリーズ第6戦(同27日)の舞台が「ほっともっとフィールド神戸」だったため、関東圏のメディアも大阪、神戸に集まりつつあった。同番組を視聴した取材陣も多かったからか、後日、こんな指摘も出始めた。
「矢野監督が直接梅野に会って、説得すればいいのに」
慰留交渉の説得に動いているのは主に嶌村聡球団本部長であって、矢野監督ではない。FA慰留は現場指揮官の役目ではないが、要は“人間関係”だ。直接の上司である矢野監督が面と向かって「オマエが必要なんだ」とひと言伝えれば、フロント幹部の説得よりも心に響くはず。その辺について聞いてみると、矢野監督の出馬は今のところ、予定されていないという。
「権利行使を示すFA宣言の受付が始まったのは、11月29日。同日から土、日曜日を除いた7日間が宣言期間です。12月7日がリミット、梅野はFA宣言し、その後、阪神が改めて慰留交渉を行うと見られています」(在阪記者)
ゴールデン・グラブ賞が発表された時点で、阪神は“宣言残留”をめざすしかないと目されている。
「梅野に限らず、FA取得選手が権利行使するか否かで『迷う』のは、球団に何かしらの不満があるか、現状に物足りなさを感じているからです」(プロ野球解説者)
シーズン最後の11試合はスタメンマスクを坂本誠志郎に奪われている。
今季の梅野だが、得点圏打率では3割2分1厘(リーグ2位)と勝負強さを見せていた。しかし、トータルでの打率は2割2分5厘と低く、盗塁阻止率も2割8分8厘と芳しくなかった。「もっと上をめざして」という気持ちがFA権取得と重なって、必要以上に考え込んでいるのかもしれない。
「球種を伝えるバッテリー間のサインは毎年変更しますが、投手が勝負どころで投げたいと思う球種、クセ、弱点は変えられません。同一リーグに梅野が移籍することになったら、トラ投手陣はどうなるのか…」(前出・同)
直接の上司、矢野監督はどう動くのだろうか。(スポーツライター・飯山満)