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フィギュア 浅田真央の前に立ちはだかるノルマ

 フィギュアスケート女子の浅田真央が16日、東京・国立代々木第1体育館で行われた今季最終戦となる「国別対抗戦」のショートプログラム(SP)に臨み、自己ベストをマークした。五輪イヤー前に課題のSPで、この上ない高得点を叩き出し、来年のバンクーバー五輪に明るい材料を得た。だが、そんな状況にも手放しでは喜べない状況もある。行く先には見えざる敵が立ちはだかっているのだ。

 世界選手権で受けた屈辱を今季最終戦のSPで見事に晴らした。
 この日は苦手な3回転ルッツと不調の3-3回転の連続ジャンプを回避し、代わりに伝家の宝刀トリプルアクセル(3回転半)からの2回転トーループに構成を変更した。今季、苦悩し続けてきた構成を変え「来季に向けてSPで得点を伸ばす」ことを狙い、作戦は思惑通りの結果を生んだ。
 自ら「きょう一番の見どころ」と意気込んでいた冒頭の3回転半を決めて勢いに乗り、その後のプログラムはノーミス。「今までは苦手のジャンプがあって、頭の中はそれでいっぱいだった。でもきょうはトリプルアクセルを他のジャンプより練習していたので、ワクワクした気持ちだった」。得意の構成に変更したことが功を奏した。
 終わってみればSPのシーズンベストを記録したばかりか、SP自己最高得点69.50点も大きく更新する会心の出来だった。世界選手権でライバルのキム・ヨナ(韓国)が出した世界最高得点76.12点に迫る高得点に、演技後は思わず「うわぁっ、すごいっ!」と自画自賛するほどだった。

 世界選手権ではSPでの遅れが響き、シニア転向後初めて表彰台を逃す屈辱を味わっただけに、来季を迎える上でこの結果に歓喜するのも当然。何よりバンクーバー五輪を前に「トリプルアクセルを入れたSPはいけると感じた」と手応えをつかんだからだ。
 SPから切り札の3回転半を取り入れて高得点を叩き出し、五輪イヤーに光明が差した浅田だが、喜んでもいられない。民放テレビ局関係者が言う。
 「この時期にこんな良い結果を出したのは気掛かり。これまでも真央ちゃんは、事あるごとに周囲の関係者や識者からSPにトリプルアクセルを入れることや、フリーで3回転半を2回入れることを助言されてきた。それでも今季はタラソワコーチが難のある表現力に重きをおき、できる限りトリプルアクセルに頼らずやってきた経緯がある。ですが、世界選手権で散々な結果だったため、今回のSPではトリプルアクセルを入れ好成績。この先、周囲からの助言も増えていくでしょうから、コーチとそういう取り巻きの間で板挟みにならないといいのですが…」
 すべてはバンクーバーで金メダルを獲るためだが、ただでさえ期待のかかる浅田には必要以上のプレッシャーがかかっているのも事実だ。
 「連盟幹部が200点超えを選手に厳命するのも考えもの。キム・ヨナが200点を超えて危機感を感じているのかもしれませんが、そんなもの選手にはプレッシャー以外の何物でもない。そもそも本番で200点を超える勝負になるかどうかなんてわからないですし」(前出の関係者)
 先の世界選手権でライバルのキム・ヨナが207.71点という女子最高得点をマークしたこともあって、日本スケート連盟の吉岡伸彦フィギュア強化部長はバンクーバー五輪について「200点を出せるスケーターでないとメダルは厳しいだろう」と発言したが、浅田には200点超えのノルマは高いハードルといえる。
 今季は191.13点がシーズンベストで、過去の自己ベストでも2006年11月に叩き出した199.52点が最高。200点超えは一度もないのだ。
 それだけにSPで想定外の高得点を稼ぎ出した今大会は大台突破のチャンス。果たして五輪イヤー前に浅田は「200点超えノルマ」に応えられるのだろうか。

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