パナソニックは今年の3月期に2期連続で7000億円を超える最終赤字を計上し、63年ぶりに年間配当をゼロにする。だからこそ市場で「負け組」の烙印を押されてきたはず…。それがなぜ、にわかにフィーバーしたのか。
同社は2月1日、2012年4〜12月決算を発表した。連結営業利益は前年同期比3.1倍の1219億円を確保したが、これは人員削減などのリストラ策の効果が大きかったためで、最終損益は6238億円の赤字(前年同期は3338億円の赤字)だった。それでも10〜12月期に限っては、人件費などの固定費削減や材料の合理化、進行する円安が追い風となり、614億円の黒字となったことから、「一部の外資系証券が“パナソニック復活”の話題作りを狙って買い推奨した」(市場筋)のが実情。実際、市場のにわかフィーバーとは裏腹に、同社は今年3月期の最終赤字見通し7650億円は据え置いたままだ。
この赤字額、電機業界で同じ負け組に名を連ねるシャープ(4500億円の赤字見通し)、ソニー(200億円の黒字見通し)を大きく上回る。しかも昨年秋の9月中間決算発表の際に、それまで500億円だった最終黒字見通しを、大幅に下方修正せざるを得なくなったものだ。記者会見の席で津賀一宏社長が「普通の会社ではないことを自覚するところからスタートしなければならない」と、危機感をあらわにしたのも無理はなかった。
むろん、昨年6月に就任したばかりの若葉マーク付きとはいえ、津賀社長も手をこまねいてばかりではない。投資計画の抑制、東京の拠点である「パナソニック東京汐留ビル」などの不動産売却、さらには役員報酬の大幅削減などの緊急対策を次々と打ち出し、パナソニック迷走の元凶といわれた中村邦夫前会長(現相談役)大坪文雄社長(現会長)コンビ時代の“負の遺産”処理を急いでいる。
「津賀社長の就任を機に中村派の役員は一掃されましたが、そのシンパは健在です。大坪会長にしても“ドン”として隠然たるにらみを利かせた中村さんのイエスマンだった。そのコンビの影響力が残る中、まだ若い津賀社長が独自カラーを発揮しようとすれば、どこで足を引っ張られないとも限らない。依然として赤字地獄にもがいているとあってはなおさらです」(パナソニック・ウオッチャー)