「言い換えれば、『荒木コーチに任せて本当に大丈夫か?』の不安が払拭できないからですよ。伊勢孝夫コーチが復帰し、野村時代にも引けを取らない緻密なミーティングがされるようになりました。いずれにせよ、次期監督は、野村時代を知るOBから選ばれることになる」(球界関係者)
伊藤コーチが浮上してきたのは、投手陣再建の手腕が認められたからである。
確かに、ヤクルトの若手投手陣の成長には目を見張るものがある。(佐藤)由規がプロ入り初の2ケタ勝利に到達し、村中恭兵もプロ5年目にして10勝、4年目の増淵竜義(22)も中継ぎで18ホールドを挙げるなど、一本立ちした。彼らが絶大な信頼を寄せているのが伊藤コーチなのである(4日時点)。
「同コーチの指導は具体的で分かりやすいものばかりです。村中は左肘を故障していたけど、同コーチは自身も肘の故障とリハビリ経験があり、ケアの仕方まで指導しています。また、先発投手陣にはマメを作らせないため、ブルペン投球の途中にバント練習を入れるなど、独自の調整法を取り入れています。マメを潰して4度の登録抹消を経験した由規は、伊藤コーチの調整法を取り入れて以来、自信を深めています」(前出・同)
コーチに就任して7年目。二軍指導者も長かっただけに、今のヤクルト投手陣の気心も分かっているのだろう。ヤクルトがクライマックスシリーズ進出可能性圏まで復調していたのは投手陣のおかげであり、『真の功労者』として、伊藤コーチの存在がクローブアップされたわけだ。
「由規の成長を例に挙げると、彼がなかなか勝てなかったのはセットポジションになると、球速が10キロ近くも遅くなるからでした。伊藤コーチは投球フォーム、マメを作らせないためなどの技術指導だけではなく、投手継投策にも参画しています。教え子でもある中継ぎの増淵の好不調を試合前に小川代行に報告し、そこで継投策に関する意見のすり合わせもしています」(前出・同)
ヤクルトは9月10日から“重大な3カード”を迎える。阪神、巨人、中日の上位3チームと連続してぶつかる。上位3チーム側にすれば、ヤクルト戦に勝ち越せるか否かが大きなカギとなり、ペナントレースの命運はヤクルト次第となった。ヤクルト投手陣の健闘如何によっては優勝チームが変わるかもしれない。『第5の監督候補』に、経営陣はどんな最終評価を下すだろうか。