メジャー挑戦を目指していた小林宏之投手(32=千葉ロッテ)の交渉も“破談の可能性”が出てきた。当初、小林は「どこでもいい!」と、球団(地域)も金額も問わないと言っていたが、慎重な姿勢も見せ始めた。
米国メディア陣の1人が、小林とメジャー各球団の交渉内容についてこう説明する。
「メジャーは小林サイドに50万ドルから100万ドル(約5000万円〜1億円)の年俸を提示したようです。情報源は言えませんが、小林は複数年契約と総額250万ドル強(3年)を希望しているそうです。五十嵐亮太(31=メッツ)の2010年の年俸が125万ドル。小林のキャリアを考えると少し安いかもしれませんね」
小林の2010年度の年俸は1億7000万円(推定)。3分の1以下になる可能性もあるわけだ。前出の米国メディアは、「契約年数を単年で妥協し、年俸を少し上げてくるだろう」と、今後の展開を予想していた。交渉は「長期化する」とも話していた。
また、岡島秀樹投手(34)がFAとなった。こちらはメジャー4年の実績からして、争奪戦に発展するだろう。
さて、前説が長くなってしまったが、選手総年俸費の削減を目指す阪神は、今オフの補強にはさほど積極的ではないと思われていた。しかし、実際は違った。
「楽天から藤井(彰人=34)をFA獲得したのは、緊急事態でした。正捕手の城島(健司)を故障で欠いたためです」(在阪球団関係者)
だが、阪神の弱点は『投手陣』である。ローテーションの一角を任せられる先発タイプだけでなく、守護神・藤川球児投手(30)に繋ぐセットアッパーも「もう1人」欲しい…。なのに、これまで阪神フロントは「小林宏がメジャー交渉で失敗したら…」という言い方しかして来なかった。ペナントレース公式日程が終了したころからで、当時は小林宏のメジャー交渉が暗礁に乗り上げるなんて、誰も想像できなかった。
「小林宏の交渉難航を受け、ソフトバンクが慌てて身辺調査を始めました。阪神? とっくに終わっていますよ。小林宏がメジャー交渉で慎重になったのは、阪神が現状維持(ロッテ・2010年)の1億7000万円を出すのを知っていたからだと思います」(在京球団関係者)
阪神は、不況によって高額年俸を提示できないメジャーの台所事情まで調べ上げていたようだ。同様に、岡島の発言も想定範囲だったようだ。岡島はFAになるなり、「日米を問わず、オファーがあれば話を聞きたい」と発言。日本球界も騒然となったが、阪神は岡島発言が出たのとほぼ同時期に「交渉に行く」を表明した。
「日本のどの球団も、岡島は欲しいはず。でも、岡島の年俸は275万ドル(約2億5000万円)。球団の総選手年俸など年度予算に影響してくる金額なので、球団上層部に承諾を取らなければなりません」(前出・同)
つまり、阪神は岡島の「日米問わず」の胸中をいち早くキャッチしていたのである。
ここまで、阪神がトレードでも投手を積極的に補強しようとしなかったのは、岡島を最優先補強投手に挙げていたからかもしれない。
「去年、阪神が松井秀喜の獲得を検討した件が報じられました。半分はパフォーマンスだったと思いますが、日本人メジャーリーガーの代理人の誰か1人が『情報源』になっているなんて噂もあります」(前出・同)
その真偽はともかく、小林宏、岡島の争奪戦が日本にも広がってくるとは、誰も予想できなかった。総選手年俸を削減する方向性は変わらないらしいが、情報収集力の凄さに他球団はかなり驚かされたようである。