「テレビ出演や、オフの仕事をマネジメントしてほしいということで契約しました。昨年までは別の会社でやっていて、今年からウチでやっています」というのが、夕刊紙上での団野村氏のコメントだが、額面通りには受け取れないだろう。
野村氏と言えば、誰もが野茂氏の代理人だったことを思い起こすように、メジャーリーグ入りを目指す日本人プレーヤーにとって、重要人物だからだ。現に将来のメジャー挑戦を口にしている阪神・藤川球児、横浜・清水直行もKDNスポーツと契約している。岩隈自身も、日本代表が連覇した昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で活躍したのを契機に、メジャー志向が急激に強まっているし、メジャー側も「ダルビッシュに負けない好投手」と高い評価をして、その動向に注目している。
09年のシーズンから年俸3億円の3年契約をしているので、来シーズまでは楽天残留が決まっているが、来オフには海外FAの資格を取得する。それだけに、岩隈がメジャー移籍の準備として団野村氏代表のKDNスポーツと契約したと見るのは、むしろ当然だろう。
が、岩隈のメジャー移籍はまだ来シーズンオフの問題と決めつけるのは早計だ。「来シーズンオフにメジャーへFA移籍されてしまえば、楽天には1円も入らない。金銭面ではシビアな経営の企業なだけに、落札金欲しさで今オフに岩隈のポスティング(入札制度)を認める可能性は十分にあるだろう」と、楽天関係者は言い切る。
団野村氏の父・野村克也氏も楽天監督時代に、「岩隈はどうせポスティングでメジャー入りやろ。楽天は金が欲しいやろうからな」と語ったこともある。
万が一、岩隈が今オフにポスティングでメジャー入りするような事態になれば、大変なことになるだろう。日本プロ野球界のエース、日本ハム・ダルビッシュのポスティングでのメジャー行きが既定路線視されているからだ。
ダルビッシュ、岩隈がダブルでメジャー移籍するようなことになれば、その衝撃度は計り知れない。「日本球界は、日本ハム・ダルビッシュ、楽天・岩隈、田中、西武・涌井、岸、ソフトバンク・杉内などパ・リーグのエースたちで支えられている。セ・リーグにもようやく広島・前田健太のような若くて将来、日本球界を背負って立つような逸材が出てきたが…」という現実が、崩れ去るからだ。さて、岩隈のポスティングはどうなるのか。今後の成り行きから目を離せない。