このマーケットプレイスでは、僅か1円で販売されている書籍なども少なくない。とはいえ、価格が1円といっても、1円払えば書籍が得られる訳ではない。購入者は送料を別に支払う必要がある。これまで、配送料は1冊当たり340円と固定されていた。そのため、価格1円の書籍購入に要する費用は341円である。しかし実際の送料は、メール便などを利用すれば340円以下に抑えられる。この送料の差額で利益を出すことが、1円出品本のビジネスモデルである。
ところがAmazonでは、8月24日から配送料を変更すると発表された。出品者に計上される配送料を250円に引き下げる。配送料引き下げによって、購入者の総支払い額も下がるため、低単価商品の需要拡大が期待できるとする。
この変更によって、配送料の差額で稼ぐ出品者は、価格設定の見直しが必要になり、1円本が大幅に減少すると見込まれる。消費者にとっては、配送料の引き下げは大歓迎である。一方で、出品者が利益を上げられなければ、マーケットプレイスが回らないことも事実である。配送料よりも本の価格で利益を出す方が、ビジネスとしては自然である。それが消費者にとっても分かりやすい。
その意味で今回の変更は好ましい傾向と捉えられるが、出品者のビジネスモデルに大きなインパクトを与える可能性があることも事実である。Amazonでは、今回の変更の施行期間を8月24日から6か月間とするが、今後変更または中止される場合があるとしている。影響を慎重に見極めようとしているものと思われる。
(『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』著者 林田力)