前走の天皇賞・春こそ未知の距離、高速馬場に苦しみ11着に敗れたが、そこは成長力のある4歳馬。無限の可能性を秘めるマツリダゴッホが、北の大地で巻き返しを期す。
福田調厩員も「既にGII(AJC杯)は勝っているわけだからね。厩舎としても、ここらのレベルの馬ではない。(GI級の)能力があると思ってやっている」と仕切り直しの一戦に意欲満々。ここは単なる通過点ともいわんばかりだ。
無理はない。とにかくハマった時の強さは、サンデーサイレンスの代表傑作であるディープインパクト、アグネスタキオンらに迫るものがある。「ハマったら爆発力はすごい。勝つ時はすべてが圧勝だからね」福田さんもAJC杯を勝った時の印象がやはり強いという。
函館にきてからも調整過程は順調そのもの。今回から手綱を任された安藤勝騎手も既に2度の追い切りでまたがっている。
8日の調教ではWコース(5F66秒0→52秒1→38秒9→11秒9=強め)で併せたコーナーストーンを子ども扱い。「3カ月間、牧場に出してリフレッシュした。久々は苦にしないタイプだし、アンカツさんも『後ろから追っかけても行きたがらないし、乗りやすい馬だね』と言ってくれたからね。あとは直前もアンカツさんに乗ってもらえば大丈夫。格好はつけられると思うよ」と仕上げに抜かりはない。力を要する北海道の洋芝も、「札幌は2つ勝っている。勝ち鞍はすべて右回りだし、悪いイメージは持っていない」と適性は十分だ。
最大目標は「天皇賞・秋」(GI 東京芝2000m 10月28日)に変わりないが、福田調厩員の「復帰戦は最初から札幌記念と決めていたし、ここは全力投球」という言葉に嘘偽りはなさそう。関東中長距離界のエースとして、好スタートを切りたいところだ。
「ゴッホはまだ底を見せていないが、こちらはとにかくまじめ。レース後はいつもハーハーいいながら帰ってくる。ただ、いい馬なんだが、勝ち切れないイメージがある」
そう福田調厩員が評するのが、もう一頭のサイレントプライドだ。
確かにGIIIを3戦して(4)(2)(3)着では、「GIIでは力不足」といわれても仕方ない。とはいえ、1600万ながら降級戦となった前走の漁火Sは余裕のある勝ちっぷり。すぐさまオープンに返り咲きしてみせた。福田厩厩員も「力が上だったね」と改めて能力の高さを感じている。
その後も函館に居残っての調整。「毎回、一生懸命走るので使った後はガクッと体が減る。今回も体重を戻しながらの調整だったが、8日の時点で484kgもう戻っているからね」と滞在競馬がプラスに働いているようだ。
過去にヒザを2度骨折。陣営を苦労させた虚弱体質も、春から順調に使われているように今期を迎えて解消されてきた。「ここにきて体質が強化されている。函館に坂路があればいうことなしなんだけど、チップがあるからね」福田調厩員に不安の色はない。
こちらもゴッホ同様、天皇賞・秋出走をもくろむが、賞金的に札幌記念1着が大前提となる。福田調厩員は「まだ先のある馬。いい経験になればいい」と謙遜するが、横山典騎手がゴッホではなくサイレントを選んだあたりは何とも不気味。ここは勝算ありと見てよさそうだ。