通常、プロ野球の各チームは「捕手3人制」で臨むことが多い。宇佐見が登録される前も、巨人は異例の捕手4人体制だった。阿部慎之助(40)、小林誠司(29)、炭谷銀仁朗(31)、そして、打撃に定評のある2年目の大城卓三(26)。原辰徳監督(60)は”5人の捕手”を使いこなすことができるのだろうか。
「宇佐見が昇格した26日、原監督は『5番・一塁』で大城をスタメンで起用しました。スタメンでマスクをかぶったのは小林。試合途中、小林に代打に送られ、途中から炭谷が捕手のポジションに就きました。結果論ですが、出番がなかったのは、宇佐見と阿部です」(スポーツ紙記者)
大城は社会人・NTT西日本時代から一塁の守備に入ることもあった。
「捕手がたくさんいるので、試合途中で小林に代打を送ることができたわけですし、今後も試合展開に応じて、捕手をどんどん使っていくということになりそう」(前出・同)
対照的なのが、東北楽天の捕手事情である。平石洋介監督(39)は嶋基宏(34)、山下斐紹(26)、4年目の堀内謙伍(22)を一軍登録しているが、昨季後半から堀内がマスクをかぶる機会が多くなってきた。
昨夏、前任の梨田昌孝氏の途中退団を受け、代行という立場で指揮を執っていたころだが、平石監督は堀内を指して、「何とかしてやりたい」と話していた。楽天のチーム事情に詳しいプロ野球解説者によれば、故・星野仙一氏もそう言って、堀内を買っていたそうだ。
堀内は静岡高校の出身、15年ドラフト会議では4位と指名順位はあまり高くなかったが、高校生の日本代表チームにも選ばれた強肩強打の有望株だった。1年目のキャンプでいきなり、右手有鈎骨の骨折で大きく出遅れた。
しかし、星野氏が一目置くようになったのは、堀内の前向きな姿勢からだった。早出・居残りの打撃練習は当たり前。空き時間ができるとブルペンに飛んでいき、投手の投げ込み練習の相手も買って出た。その一生懸命さを見て、「何とかしてやりたい」と思ったのだろう。昨年は後半、エース・則本の先発試合でマスクをかぶるチャンスも与えられた。
「ベンチスタートとなることも多くなった嶋が堀内にアドバイスを送っています。チーム全体が堀内を育てようとしています」(前出・プロ野球解説者)
捕手3人制だから、嶋も試合で使いながら堀内を育てることができるのだろう。
アドバイスといえば、こんな巨人情報も聞かれた。36歳の中島宏之は日米数球団を渡り歩いたベテランだが、投手が打席に立つセ・リーグでの野球は初めてだ。投手が打席に立つセ・リーグの代打準備は独特で、阿部がアドバイスを送っているという。オフシーズンは小林に「配球」も教えている。そのせいか、巨人捕手の出場機会は他球団よりも少ないが、雰囲気は決して悪くないそうだ。
捕手のポジションは、外国人選手で補うのが難しいとされている。日本の野球は配球面など捕手の能力で試合が決まるケースが多く、投手の個性を生かすアメリカ式と異なるからだ。別ポジションでの出場、代打攻勢だけではなく、守備機会を増やさなければ、やはり、若い捕手は育たないのだ。
(スポーツライター・飯山満)