「そのころ府中の方に住んでたのね。仕事の後は、送りの車で帰ってたんだけど…」車にはほかのコも同乗していたわけだが、場所の都合で、彼女ひとりが最後まで残るケースが多かったのだという。「ドライバーの人はいつも同じで、ふたりきりになるから、 だんだん話しかけてくるようになって」ところがリリカさんにしてみれば、キャバクラでの仕事が終わった後、どうとも思っていない男性とのふたりきりのサービストークは、疲れが増すだけで苦痛になるばかり。
しばらくは、愛想笑いで適当にいなしていたそうなのだが、「段々口説きモードになってきたっていうか、気があるみたいなことを言ってくるわけ」従業員やそれに準ずる男性が、在籍女性を口説くというのは、基本的にキャバクラ業界での重大なルール違反。
これが毎日続いたのではたまらないということと、「ちょっと身の危険も感じるようになった」ため、困っていることを店長に直接話してみたのだが、「『別になにもされてないんでしょ』って、全然聞いてくれなかったの。後でわかったんだけど、ドライバーの人が店長の友達だったんだって」こうなってしまっては、自分の身は自分で守るしかない。仕方なく、その日はタクシーで帰宅することにした。
ところが彼女、六本木から府中までタクシーに 乗ったのはこの日が初めて。しかも「途中でうっかり寝ちゃったのね。で、着いたら料金が3万円くらいになってて…」いつも格安の送迎を使っていた彼女にとって、タクシーがそれほど高いものだとは知らなかったのだ。
持ち合わせが足りなかった彼女が、到着後も降りずに困っていると、運転手が 『どうする? 家に上がるか警察行くか』と聞いてきたのだという。
「実はATMに行けばお金はあったんだけど、高すぎて払いたくなくて(笑)」彼女もわかってはいたが、家に上がってどうするのか聞いたところ、「『言わなくてもわかるだろ、こんなこと初めてじゃないんだよ』って。よくあることなんだぁって思ったら、まあいっかと思っちゃって」好みでもなんでもないオジサンだったが、結局、カラダで料金を支払ってしまったのだそうだ。「でも本当に高かったから、あのときはかえってラッキーだったかなとか思ってた。もう絶対やらないけどね(笑)」
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