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「私と絡むことで名を上げてくれたら」ジャガー横田ヒール転向の真意を語る!

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新井健一郎、レフェリー、ジャガー横田、藪下めぐみ

 今年でデビュー42周年を迎えるジャガー横田がリーダーのヒールユニット『クライシス』の第5回主催興行が2日、川崎25Dスタジオで開かれ、超満員となった。

 2015年に、男子のレスラーTARUがリーダーのヒールユニット『ブードゥー・マーダーズ』を吸収する形でクライシスを結成したジャガー。TARUとの合体により、男子選手との対戦に本格的に踏み切るとともに、38年間貫いてきた“正義の顔”を捨てることになる。

 クライシスを結成するまで、ジャガーが椅子を持つ場面を見せたのは数えるほどしかなかった。ダンプ松本率いる極悪同盟や、ライオネス飛鳥(引退)率いる裁恐軍が反則攻撃を仕掛けてきてもジャガーは正攻法で対応してきた。

 特に吉本女子プロレスJd'時代に繰り広げた飛鳥との抗争はシングルでもタッグでも名勝負の連発だった。ロープにかけた机に乗った飛鳥が放った雪崩式ライガーボムを、スーパーウラカンラナで切り返した場面(1997.10.12後楽園ホール)は衝撃的だった。本人も「あれは一か八かの賭けだったけど、芸術的だった」と振り返る。凶器やセコンド介入を辞さないヒールユニットを一蹴する衝撃だった。

 98年11月には古巣の全日本女子プロレスで、デビル雅美(引退)、ヒールの飛鳥とレジェンドトリオを結成。この時、飛鳥が凶器を使用しようとしたところ「飛鳥!やめろ!」と一喝。飛鳥はこれに従っている。

 そこまで凶器やセコンド介入に頼らないプロレスにこだわってきたジャガーはなぜヒールに転向し、凶器を手にセコンドを介入させるようなプロレスに転向したのだろうか。クライシス主催興行の中にその理由はあった。

 オープニングマッチでは、クライシスの佐藤綾子が、忍、くいしんぼう仮面と3WAYマッチに臨んだ。佐藤よりも忍とくいしんぼうの“悪さ”が目立っていたが、3人の絡みに観客は笑顔を見せた。

 第2試合では、クライシスの新メンバーであるガッツ石島が、ドレイク森松と男女混合タッグを結成。2人はガッツワールド時代の同僚であり、ドレイクはJd'時代、飛鳥の一門としてジャガーと対峙してきた。この日は黒田哲広&新納刃の男子タッグと対戦。ガッツは鉄パイプ、ドレイクは金属バットを手に大暴れ。ガッツ&ドレイクのパワーに観客は圧倒されていた。

 ガッツは「オレはイケメンが嫌いなんだよ!」と叫び、イケメンの新納を標的に。観客はガッツに「ブサイク」と野次を飛ばし、これにガッツも反応していた。試合は黒田のラリアットにドレイクが敗れたが、見応えのある試合にファンは熱狂していた。

 セミファイナルではクライシスのKAZUKIが佐藤とガッツをセコンドに引き連れて、“女子プロレス界の未来”Sareeeとシングル対決。11日のディアナ新木場1stRING大会で、アジャ・コングとデスマッチで対戦するSareeeにとっては負けられない対決だったが、クライシス勢の介入や凶器攻撃が止まらない。

 実質1対3のハンディキャップマッチ状態となったが、Sareeeの意地の強さが爆発。ガッツを張り手で場外に排除するなど、強さが際立っていた。しかし、最後はクライシスが反則負け。試合後、ジャガーは「反則は5カウント以内ならいいけど、反則負けになっちゃダメ!セコンドもギリギリのところでやりなさい。勝たなきゃ意味がないの!」とメンバーをとがめた。一方のSareeeは「何で私がこんな試合をやらなきゃいけないのか」と憤りを隠せなかったが、その謎は試合後に解けることになる。

 メインは前回大会で勃発したクライシスと、長与千種が代表を務める団体マーベラスとの対抗戦。マーベラス側は渡辺智子、マーベラスインパクトの男子レスラー井坂レオに、ディアナの井上京子が加わりトリオを結成。クライシス側はジャガー、藪下めぐみ、そして新メンバーの新井健一郎のトリオで臨んだ。

 クライシスは早くから若い井坂を標的に。セコンドも凶器もフル稼働させて、ジャガーをバックアップした。京子と渡辺の暴走を最小限に食い止め、最後はアラケンがジャンピングパイルドライバーで井坂から3カウントを奪った。クライシスがやりたい放題の試合を制して、主催興行のメインを締めた。

 反則に対して抗議する京子&渡辺に「あんたたちだって反則してるよ。あんたたちは体が反則だから」とジャガーは理不尽に切り返した。「きょうは対戦相手も良かった。プロレスは一人じゃできないから。悪役が盛り上げないと、ベビーは強くならない」と持論を展開。長男が受験を迎えたことを話し、「木下家は離れていてもそれぞれが頑張るんです」と家族円満をアピールし、新メンバーとともに記念撮影した。

 試合後、ジャガーがヒールに転向した真意について改めて直接聞くと「プロレスに男女の壁はないと思っていて、クライシスを始めてインディーの男子の選手にもいい選手がたくさんいることが分かった。私と絡むことで名前を上げてくれたらいいと思う。女子の若い子もヒールの私たちとやることで、強くなっていってもらわないと、女子プロレスに未来はない」とキッパリ。

 「これを利用したい子は利用すればいいし、やりたくない子は去ればいい」と言い切るジャガーは「クライシスのメンバーは私の教え子なんですけど、彼女たちも普段は見せない顔をここで見せてくれればいい」。眼光の鋭さは変わっていなかった。ジャガーは自身がヒールに転向することで、若い選手の“底上げ”を図り、活性化することを望んでいたようだ。このコメントから、Sareeeが憤りを見せたことはジャガーにとって狙い通りだったことが分かる。

 「本当は3ヶ月に1回はやりたい」と今後の主催興行開催への意欲を見せたジャガー。クライシスの新メンバー2人についても「いい選手」と評価している。今後のプロレスラーとしての活動も注目したい。

取材・文・写真 / どら増田

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