両親の死因は向精神薬中毒。
司法解剖の結果、母親の死に関して窒息の痕跡は見つからず、また今回母親だけの自殺ほう助で逮捕だが、母親が薬を飲まされた痕跡がないことから、母親自らの意思で、自殺を選び自ら薬を飲んだ。その薬を猿之助容疑者が薬を提供することで、自殺が成立したと警察は見たのだろう。
「自殺ほう助罪」とは「死にたいと思っている人の手助けをすること」だ。6か月以上7年以下の懲役又は禁錮となる。
しかし、死ぬ意味を理解できていないであろう認知症患者や子供が、仮に心中などに同意をしたとしても、そのような同意は無効となり、殺人罪が成立する。
今回警察は、母親は自殺ほう助罪の適用にとどまると判断し、これから猿之助容疑者や関係者の本格的な取調べを進め、父親の事件に適用すべき罪名を決めることになる。
父親は要介護状態の寝たきりであり、意思疎通も困難であったという。
これから問われるのは、はたして父親が本当に自ら死のうと思って薬を飲んだのか? 自分の力で飲めたのか? であろう。
猿之助容疑者の供述によると、薬を飲ませてから頭にビニール袋をかぶせたという話もある。
また、薬のパッケージが現場から消えてしまったのも謎のままだ。
猿之助容疑者は「パッケージは家の外のごみ置き場に捨てた」と語っているらしいが、なぜそんなことをしたのか?
捜査がすすめば父親に関しては「自殺ほう助罪」ではなく、より罪が重い「殺人罪」も考えられる。
しかしまだこの事件の謎は多い。両親に薬を手渡ししたのは、猿之助容疑者自身だと語っているようだが、だとするとずっと以前より精神科などに通院し、3人もの大人が死ぬほどの量をため込む必要がある。病院はそんな強い薬を、一度には渡さないからだ。
と、すれば猿之助容疑者は、かなり以前から一家心中を考えていたことになる。だとすれば週刊誌にハラスメントの記事がスクープする前から、心中の準備をしていたのだろうか?
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。