ナチスドイツはオカルトに傾倒していたところがあるが、その背景には19世紀後半から20世紀初頭にかけて地下世界「シャンバラ」に関するブームが生まれていたという面がある。
ヒトラーもまた、シャンバラの秘密を握ると覇者となれると信じていたようで、国家的なシャンバラ探査プロジェクトを行い、探検隊を編成して各地に送り出していた。
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結局シャンバラへの入り口は発見できなかったものの、「胸に『卍』が刻まれた約1000年前の仏像(毘沙門天の座像、高さ24センチ、重さ10.6キロ)」を発見、アーリア人チベット起源説を裏付けるものとして持ち帰ったという。
その仏像は「鉄の男」と呼ばれ、ドイツに保管されていたが、2012年に実は隕石(約1万5000年前にシベリア・モンゴルの境界線付近に落ちたチンガー隕石の一部)を加工研磨してつくられたことが判明している。
シャンバラとは関係ないものではあったが、仏教文化的にみて貴重なものであったのは間違いないと言えるだろう。
だが、ナチスが探し求めたのは地下帝国シャンバラだけではなかった。なんと海の底に沈む失われた都市アトランティスも探し出そうとしており、ヒムラーは深海探査を行うよう命じてほしいとヒトラーに進言していたのだという。
この話は先日、海外のポッドキャスト番組「The Rest Is History」で歴史の専門家たちによって語られたもの。
番組に出演したドミニク・サンドブルック氏とトム・ホランド氏(スパイダーマン役の俳優と同姓同名の別人)は、失われた都市にまつわる遺産とナチス・ドイツとの関連について次のように語っている。
かつて、アトランティスに住んでいた人々は皆「白い肌、ブロンド、青い目」を持つ人種に限られており、この特徴がナチスの理想とするアーリア人と合致したため、ヒムラーはアトランティスに魅了されたのだという。
「アトランティスは北海にあるという説がありました。さすがにヒトラー自身もアトランティスがドイツ民族、アーリア人の祖国であると考えることには抵抗があったようですが、腹心の部下たち、ルドルフ・ヘスやアルフレッド・ローゼンベルクらはこの説に夢中でした」
「ヒムラーも必然的にこの説を信じ込み、戦況ゆえに北海での深海探査を開始できないことを非常に残念に思っていました。もし彼らが順調に戦争に勝っていたら、当時の考古学者にとっては素晴らしいことだったかもしれませんが、ヒムラーはその発掘に何十億ものライヒスマルクをつぎ込んだことでしょう」
ちなみに、彼らはかつてグレートブリテン島南東部に存在していた「ドッガーランド」をアトランティスと関連づけて考えていたようだ。
ドッガーランドはかつてイギリスとヨーロッパ大陸を結んでいたが、紀元前6500年ごろ、最後の氷河期に海面が上昇して北海南部に水没してしまった。
23年前にマンモスの頭蓋骨が発見されるなど、ドッガーランドの存在を裏付ける証拠もあるが、さすがにアトランティスの遺産が見つかるとは考えられないという。彼らが北海にアトランティス探検に行かなかったのは幸運だったと言えるかもしれない。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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