民放の主演ドラマはおよそ6年ぶりだが、演技力は折り紙付き。カンテレ制作の主演ドラマは通算8作目で、同局の最多記録を持つ。97年の「いいひと。」がデビュー作だったが、平均視聴率20.4%(関東地区、ビデオリサーチ社調べ)を記録。元SMAPでは木村拓哉と双璧をなす視聴率モンスターだ。
>>ギター愛好家の草なぎ、アメリカで趣味と仕事を兼ねる強運発揮<<
ドラマ俳優、舞台役者として抜群の評価を得ている草なぎだが、ひと足早く目をつけたのは“鬼才”つかこうへい氏(62歳没)だった。10年に死去した劇作家で直木賞受賞作家。つか氏は草なぎの主演舞台「蒲田行進曲」(99年と00年)を演出し、「大天才」と称賛した。
80年代から複数回舞台化されている同作で、草なぎは大部屋の俳優・ヤスの役柄を与えられた。ヤスの妻・小夏は、舞台経験が浅かった小西真奈美が演じた。初演時、草なぎは23歳。毎日、小西と口立てで練習し、1日10時間に及ぶこともあった。2人そろって役に入り込むあまり、稽古で涙を流すことが常態化していた。劇中で2人が歌ったのは、中村あゆみのヒットナンバー「翼の折れたエンジェル」。「罠の戦争」の撮影中、草なぎはこの曲や、つか氏を盛んに思い出していたという。テレビ誌の取材ライタ―が振り返る。
「早朝撮影でつらいとき、頭のなかで『翼の折れたエンジェル』がリピートされていたそうです。YouTubeで探して、何度も聴いていた時期も。舞台のとき、千秋楽につかさんから、『何十年かたったときにお前らの頭に残ってるのは、この歌だけかもな。おまえらが大人になったとき、商店街かなんかをふらっと歩いて「翼の折れたエンジェル」が流れたら、思い出すのは舞台じゃなくて、この歌だけかもしれねぇな』と言われたそうで、クランクインして毎日現場に通っていたときは、この言葉を思い出していたといいます」
来年は、映画「孤狼の血」や「死刑にいたる病」を撮った白石和彌監督とタッグを組んだ「碁盤斬り」が公開される。俳優としては青天井。草なぎを求める有能クリエイターは後を絶たない。
(伊藤由華)