9月15日の両チームの一戦はオリックスが延長12回、サヨナラ勝ちを収めた。しかし、こんな見方もできる。新庄監督の采配が裏目に出て、日本ハム打線が流れを掴みきれなかった、と――。
「日本ハム打線はオリックスを上回る12安打を放っています。でも、盗塁を仕掛けたものの、全て失敗に終わっています」
この一戦を観たプロ野球解説者がそう評していた。
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4盗塁死が響いて競り負けた、そんな感じの一戦だった。
「(相手の)キャッチャーがよく刺した」試合後の新庄監督の言葉だ。サヨナラ負けの屈辱からか、淡々と答えていた。
“盗塁死”が最も響いたのは、延長12回表。最後の攻撃機会だ。無死一塁、「バスターエンドラン」のサインを見破られた。オリックスバッテリーはバットの届かないところに投球を外し、ボールはキャッチャーから二塁へ。一塁走者はタッチアウト。勝ち越しのチャンスは潰えてしまった。
「(打球を)転がして、一、三塁にしたかった。いいゲームだったんだけどなあ…」
新庄監督がそうボヤいた。
「延長11回、清宮幸太郎も盗塁失敗でアウトになっています」(前出・プロ野球解説者)
清宮は単独スチールを決められるような俊足タイプではない。となれば、二盗はベンチの指示だろう。
チーム関係者によれば、「グリーンライトのサイン」が出ていたという。
「ランナーが『盗塁できる』と思ったら、好きに走っていいのサインです。新庄監督になってから取り入れられたもの。いや、もともとあったんだけど、新庄監督になって、重要視されています」
新庄監督は盗塁や、野手と野手の間に打球を転がして相手守備陣を攪乱させる攻撃を好む。
バスターエンドランを見破られた12回表の攻撃にしても、そうだ。成功していたら、新庄監督がボヤいていた通り、「無死一、三塁」でオリックス守備陣にキョーレツなプレッシャーを与えていた。成功すれば大量得点のチャンス、でも失敗すれば…。
新庄監督のめざす野球は、失敗した時の代償が大きい。
「秋季キャンプでバントやエンドランなどの練習を徹底的にやるそうです。成長過程の若い選手が多いし、突出した4番バッターに頼るのではなく、走者が主役になるチームにしようとしています」(前出・チーム関係者)
9回、パ・リーグ首位打者争いトップの松本剛が代打起用され、クリーンヒットを放った。故障が完全に癒えていないことと、連戦疲労が考慮されてベンチスタートとなったのだが、新庄監督は松本にタイトルを獲らせてやりたいとも話していた。
「でも、そういう気を遣うのは今年だけだからね」
機動力に活路を見出す野球に、特別扱いの選手はいらない。新庄スタイルが完成されるまで、もうしばらく時間が掛かりそうだ。(スポーツライター・飯山満)