まずは大前提として、本土復帰50年を記念して作られたという割には、そこに至る県民の歩みや想いが、すくい取られていないことだ。それでいて、ヒロイン・暢子(黒島結菜)の上京先は、沖縄にゆかりのある横浜・鶴見にしているなど、“形式上”のことが多い。
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黒島演じる暢子もまた、共感できないキャラクターだ。高校時代、食品会社への内定が決まりかけたその場で、人事担当者がいる前で「東京でシェフになる!」といきなり宣言。住む場所も、ましてや修業先も決めないまま、先に上京していた兄・賢秀(竜星涼)のもとに押しかけていた。最近は、和彦(宮沢氷魚)の母・重子(鈴木保奈美)に結婚の許しを得るため、食べてくれるか分からない手作り弁当を、毎朝家に届けるという鋼のメンタル。ポジティブというより自分勝手が過ぎるのではないだろうか?
賢秀、優子(仲間由紀恵)、良子の夫・博夫(山田裕貴)も支離滅裂な描き方だが、炎上する台詞も多い。7月25日放送の第76話では、和彦の上司・田良島(山中崇)が、母・重子への結婚挨拶に気を重くしている和彦に「母親の一番の不幸は息子と結婚できないことっていうからな」と、からかい気味に言って炎上した。
時代考証にも甘さがある。舞台となるイタリアン「フォンターナ」では、劇中、1972年にペペロンチーノが出されていた。だが食文化研究家などの専門家に言わせると、それがメジャーになったのは80年代後半とのこと。また、1978年、戦後ならまだいざ知らず、智(前田公輝)が未舗装の砂利道を、オート三輪のトラックで配達していた。
フィクションだからこそ、その時代の雰囲気を正確に押さえておかなければならないのだが、もはや、なんとなくの雰囲気でオート三輪にしたと思われても仕方あるまい。
今もネットでは「ヒロインの骨格が見えてこないドラマ」「史上最悪の朝ドラ」「いつ面白くなるかと思って我慢してみてるんだけど、まだ?」「申し訳ないですが、 朝ドラのせいで 沖縄が嫌いになりつつ あります」と、もはやテコ入れも評価も変えられないほど、脚本・演出すべてにおいてお粗末のようだ。これでは現場で懸命に演技する役者がかわいそうというものだ。