力士全体の約3割(全627名中174名)が全休・途中休場を強いられるなど新型コロナが猛威を振るった今場所。それでも優勝争いを引っ張った逸ノ城、横綱・照ノ富士(11勝4敗)、大関・貴景勝(11勝4敗)を中心に各力士が熱戦で土俵を盛り上げたが、中には取組前後の態度が思わぬ注目を集めた力士もいた。
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初日の平幕・佐田の海対平幕・碧山戦では、取組後の佐田の海のコメントが話題となった。取組では碧山の引きを食らった佐田の海が地面に落ちたが、佐田の海の体が落ちる直前に、碧山の左足つま先が土俵外についていたのではと勝負審判から物言いがつく。ただ、碧山のつま先が土俵を割ったのかはNHK中継で流された取組のスロー映像でもはっきりとは確認できず、結局判定は覆らなかった。
この後、花道担当アナウンサーは「相手の足が残っていたと思いましたので仕方ありません」と当初は納得していた佐田の海が、中継で再度流されたスロー映像を確認すると「ん? これは碧山関(のつま先が)出てなかったですか?」と一転して未練をにじませたことを伝える。これを受けたネット上には「気持ちは分かるけど、公の場で不満漏らすのはやめといた方がいい」といった苦言が寄せられた。
3日目の貴景勝対平幕・琴ノ若戦では、貴景勝が見せた取り口が問題となった。立ち合い直後に両名の間に一瞬距離ができたが、貴景勝はその瞬間、琴ノ若の顔面に右フックのような強烈な張り手を食らわせる。「バチンッ!」と大きく鳴り響いた音に場内からはどよめきが起こった。
貴景勝はこの後体勢がグラついた琴ノ若を厳しく攻め完全に土俵を割らせたが、なおも琴ノ若の胸を左腕で強く突くなどダメ押しのような動作も見せたため、ファンからは「格下相手に顔面張り手のみならず、ダメ押しまでやったのはみっともない」と批判が噴出。また、中には「前回張られたのを根に持ってたのか?」と、琴ノ若に立ち合い張り手・変化を連発された3月場所の仕返しではないかと勘繰るコメントも散見された。
千秋楽の小結・豊昇龍対平幕・翠富士戦では、敗れた豊昇龍の態度が物議を醸した。渡し込みを仕掛けた翠富士、網打ちで応戦した豊昇龍がほぼ同時に地面に落ちたが、行司は翠富士に軍配を上げ物言いもつかず。豊昇龍はこの判定に納得がいかなかったのか、取組後の一礼を終えた後に向正面の勝負審判を一度見ながら土俵を降りると、眉間にしわを寄せ険しい表情で花道を下がっていった。
同戦は翠富士が渡し込みを仕掛ける際、左足つま先が返って地面についたような様子がリプレー映像に映っており、中継解説・北の富士勝昭氏(元横綱)も「物言いがついてもおかしくない」という見解を示したほどの際どい一番だった。それでも、ネット上には「以前から態度が問題視されてるんだから、そろそろ一時の感情は抑えられるようにならないと」といった指摘も見られた。
千秋楽までもつれた優勝争いの傍らで、こうした力士の態度も注目を集めた7月場所。相撲は相手に敬意を払い礼を欠くことなく取組を行う、いわゆる「礼に始まり礼に終わる」作法が重んじられているため、勝敗以上に注目して取組をチェックしているファンも少なくないようだ。
文 / 柴田雅人