過去に、総理大臣経験者として唯一国葬が行われたのは、戦後に活躍した吉田茂元総理のみである。2019年に亡くなった中曽根康弘氏や、2006年に亡くなった橋本龍太郎氏などは、内閣と自由民主党の合同葬儀という形で行われており、国葬ではない。
吉田氏の国葬はどのような形で行われたのか。吉田氏は1967年10月20日に89歳で亡くなった。死去を受け、東南アジアを訪問中で海外にいた佐藤栄作元総理は、予定を繰り上げて急きょ帰国している。
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家族による密葬ののち、同31日に日本武道館で国葬が行われている。戦後初の国葬であった。
吉田氏の遺骨は、長男で英文学者、文芸評論家の吉田健一氏に抱かれ、神奈川・大磯の私邸から日本武道館までを移動。この時、沿道で吉田氏の遺骨を見送る人物は約11万人に及んだという。
さらに会場となった武道館では、生前愛した菊の花が飾られた。これは、今では当たり前となった、斎場を花で埋め尽くす生花祭葬が初めて行われたと言われている。
国葬では佐藤元総理が委員長を務め、皇太子ご夫妻(現・上皇、上皇后)のほか、西ドイツ議会の議長ら海外73か国から要人が参列した。一般参列者は約3万5千人に及んだという。
日本武道館のキャパシティは最大で14471席、コンサートで使用する場合は1万席程度が一般的とされる。3万5千人という数字がどれだけ大きなものかがわかるだろう。
安倍氏の連続在職日数は、吉田氏の2248日、佐藤氏の2798日を抜き、憲政史上最長の2822日を記録している。通算でも3188日と歴代最長だ。首相歴だけを見ても、国葬が実施されるのは不思議ではない。