河瀨氏としては、異なる視点を持つべきと言いたかったのかもしれないが、これには「ロシアが悪いのでは」といったツッコミが殺到してしまった。さらに、昨年12月にNHKのBS-1で放送されたドキュメンタリー『河瀨直美が見つめた東京五輪』の字幕に、事実と異なる内容が表示され問題となったばかりだけに、このタイミングでの祝辞に疑問を示す声も。
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こうした、物議を醸す発言は過去にもあった。
2008年には、特別栄誉教授で建築家の安藤忠雄氏が祝辞を述べたが、その場で「2階席に座っている皆さんは、本日は会場から出て行ってください」と呼びかけた。この場所は主に新入生に付き添ってきた保護者たちが座る場所だ。安藤氏は「親離れ」「子離れ」が重要であり、この場から出て行くよう求めたのだ。安藤氏なりの「過保護」批判と言える。これには賛同の声がある一方、「子どもの晴れ舞台を親は見たいのでは」といった否定的な声も聞かれた。
2016年には、五神真総長(肩書は当時)が、新聞はヘッドラインだけではなく記事の本文もきちんと読むべきといった内容を話した。いわばメディアリテラシーの重要さを説いた形だ。しかし、『読売新聞』(読売新聞社)の電子版は「東大生よ、新聞を読もう...入学式で五神学長」というタイトルで記事を配信。「新聞や情報を読み込むべき」という五神氏の言葉が、「新聞を読もう」に変換されてしまった形で、ネット上では「都合よく引きつけすぎ」といったツッコミが殺到してしまった。
2019年には、フェミニズムの著名な研究者として知られる上野千鶴子名誉教授が祝辞を述べた。その場で上野氏は合コンの話を引き合いに出し、「東大の男子学生はモテます」と語る一方、女子は学校名を隠すといったエピソードを披露。さらに、「あなたたちは頑張れば報われると思って、ここまで来たはずです。ですが、冒頭で(東京医大の)不正入試に触れた通り、頑張ってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」とも現実的な話を披露。この内容には「ズバッと言ってくれた」と称賛の声がある一方、「祝辞の内容にふさわしくない」といった批判も聞かれた。
東京大学入学式の祝辞は、良くも悪くも注目を集めやすいと言えるだろう。