作品はチームの裏側に迫るノンフィクション。最下位に沈んだ今シーズン、選手自身も把握していない悩みや苦しみが多々描かれている。今永は「佐野(恵太)もキャプテンとして苦しいシーズンを送っていたんだな、など新しい発見がありました。僕はサポートをしてあげられなかった」と選手会長として反省の弁を口にするなど、トーンも低めになりがちだったが、ファンに向けての決意は今永らしい言葉のオンパレードだった。
映画を見てくれるファンに対しては「今シーズン、このような成績の中で足を運んでくださる方々には感謝していますし、映画を通して僕たちがプレーをしているところに、ほんの少しでも自分の感情を僕たちに託してもらって、それを僕たちが背負って野球をしなければ」と独特の表現でファンとの共闘を願う。逐一カメラが回っていることに関しても「仕事の一部と捉えている。自分の行動に責任を持つためのツールでもあると思う。責任感とか使命感を植え付けさせてくれるような原動力にもなっている」と、選手によっては煩わしさも感じかねない存在をポジティブに捉えるところも今永らしい。
来シーズンに向けて「この状況でも僕たちを応援する理由を見つけて、応援し続けてくれたファンに報いなければ、チームとして、選手としての価値がどんどん薄れてしまう。最後まで応援していただいた方々に、なにか残さなければいけないな」と決意。「来シーズンはたくさんの笑顔を届けられるような映画にしたい。しっかりと先頭で引っ張っていきたいなという気持ちになりました」と宣言した“投げる哲学者”。唯一無二のワードセンスの中に、並々ならぬ闘魂が感じられた。
写真・取材・文 / 萩原孝弘