しかし、この「ヤマ失言」は、ヤクルトベンチを惑わす陽動作戦になったようだ。
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「ヤマ」で当てはまる名字のピッチャーは、第4戦で先発した山崎颯一郎を除き4人。大方の予想は左腕・山崎福也(以下・山崎)。「もう1敗もできない」ということで、シリーズ初戦に先発した山本由伸を中4日で登板させてくるかもしれない。山岡泰輔もいる。リリーバーだが、出場資格選手名簿には山田修義も記載されている。
「山崎だと思うけど、山本が先発してくることも念頭に入れておかなければなりません」
グラウンドに降りた複数のプロ野球解説者がそう予想していた。同時に、こんな指摘も聞かれた。
「ヤクルトは山崎に関する情報を持っていないのも同然なんです。山崎はクライマックスシリーズも投げていないので」(球界関係者)
山本と山崎ではタイプが全く違う。利き腕の左右の違いはもちろんだが、直球勝負もできる山本に対し、山崎は変化球を使って緩急で勝負してくるピッチャーだ。
「山崎のカーブは曲がり幅も大きく、初見ではまず打てないでしょう。フォークボールも投げてきますが、落ちる時に揺れるんですよ。セ・リーグにはいないタイプです」(在阪記者)
ヤクルトサイドからすれば、今季の沢村賞投手・山本との対戦もイヤだが、データのない山崎も警戒しているわけだ。
山本が強行先発してくる可能性は「無い」とは言い切れない。初戦の登板以降、試合出場登録からは外されている。先発投手なのだから当然だが、この第3戦から5戦までの東京遠征には帯同している。シリーズ前は「初戦に先発したら、次の登板は第6戦か7戦」と予想されていた。その通りならば、わざわざ東京遠征に同行させる必要はない。
「22日、沢村賞の発表がありました。その会見だけだったら、神戸でも対応できたはずです」(前出・球界関係者)
山崎か、それとも山本? どちらが来るのか、ヤクルトサイドは絞り切れないでいた。
第4戦の7回裏、ヤクルトの攻撃中だった。青木宣親の右手付近を内角球が襲い、打席内に倒れ込んだ。「コン!」という乾いた衝撃音が取材エリアにも聞こえてきた。バットのグリップエンド付近の右手小指を直撃したと思われたが、青木自らが「右手には当たっていない」と申告。そのフェアプレー精神に場内から拍手も起こった。
その直後のオリックスの攻撃では代打・モヤの打球が東京ドームの天井を直撃した。今度は、球場がどよめいた。
「モヤが出塁した後、代走が送られました。1点差ですし、中嶋監督が仕掛けてくる(盗塁など)と思ったんですが、何もありませんでした」(前出・在阪記者)
あえて何も仕掛けなかったのなら、第5戦の先発投手は、順当に山崎で行くとも予想できるが…。青木の「死球ではない」アピール、モヤの天井直撃弾と、珍しいプレーが続いた。これは、第5戦が“波乱”となる前兆ではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)